スーパーカー大王が選んだのは箱根の山中でクラッシュしたクルマ! 【史上最高の国産車と輸入車を挙げてください 山崎元裕編】
奇才が手がけた歴史に残るロードゴーイングカー
さて一方、はじめに簡単にそれが決まったと書いた、史上最高の輸入車は何か。輸入された台数は少ないものの、これは迷うことなくマクラーレンの「F1」だ。 1963年にブルース・マクラーレン・モーターレーシングを創立するも、1970年には同年のCan-Amシリーズに投入する計画だった「M8D」のテスト中に事故でこの世を去ってしまったブルース・マクラーレンが、長年にわたって描いていた夢。それは自らの名をメーカーとして掲げたロードカーを生産することだった。 そしてその夢は、1992年のモナコGPでの発表でようやく結実することになるのである。 実際にマクラーレンF1のディテールを検証していくと、そこにはサーキットを走るF1マシン以上のエンジニアリングのこだわりが見受けられる。いわゆるレギュレーションによる制約がなくなった分、ロードカーのF1はダウンフォースの多くをボディ下面のヴェンチュリートンネルで生成するグランドエフェクトカーとして設計されているほか、さらにその効率を高めるための電動ファンも装備されている。 かつてブラバムの「BT46B」が採用したものの、やはりレギュレーションの変更によってF1の世界からは締め出されたこの技術。ちなみにその考案者はこのロードカーのF1でチーフエンジニアの役を担ったゴードン・マレー、その人だった。 ドライバーズシートをセンターに配置し、カーボンモノコックを採用するなど、重量配分と軽量化を徹底したF1。ミッドに搭載されたエンジンは、BMW M社から供給された6リッター仕様のV型12気筒DOHC48バルブで、その最高出力は627馬力。これにトリプルディスクのクラッチと6速MTを組み合わせるのがパワーユニットの概要だ。 そのデビューから30年以上を経過しても、いまなお魅力を失わないマクラーレンF1。その生産台数は、コンペティションモデルも含め、わずかに106台。現在ではオークション市場で、ほぼ新車のコンディションを保ったロード仕様が、20億円を超える価格で取り引きされた例もある。
山崎元裕