【新旧比較】変わらないようで変わった新型スペーシア ギアは新型と旧型はどこが違う?
現行スペーシアの登場から遅れること約10か月を経て、スペーシアギアも追ってモデルチェンジされた。ぱっと見では変わっていないように見えて、細かく見れば変わっていることがわかる。 では新型は旧型とどこがどう違うのか。写真で比べて追ってみよう。 TEXT:MotorFan編集部 PHOTO:井上 誠/スズキ/MotorFan編集部スーパーハイト軽SUVのパイオニア、スペーシアギアの新旧内外比較 【他の写真を見る】スペーシアギア新旧、ここが違う、あそこが違う・・・ 9月20日、スペーシアギアが発表・発売された。 ベースとなる現行スペーシア(とスペーシアカスタム)は昨年11月の発表・発売だから、本家から約10か月遅れで走り出す。 2023年初頭からインドで生産・販売され、今年7月からティザー展開中の国内版フロンクスの前評判が上々だ。 いまどき正式発表前のティザー活動や事前受注はめずらしくないが、フロンクスに向けたスズキのティザー作戦はこれまでにない積極性を見せ、7月下旬のティザーサイト公開から8月上旬の事前受注開始をはさんで、8月下旬には全国の主要拠点ディーラーを転々とする実車展示キャンペーンを実施。販売関係者によれば、正式発売前の実車を持ちまわりで販社展示するのはスズキでは初めてのことなのだそうで、トヨタライズ/ダイハツロッキーのほか、ホンダWR-Vとの比較で見に来る来場者もいたという。 フロンクスの思いがけない(?)評判ぶりに、ライズ&ロッキーもWR-Vも心中おだやかではなかったろうが、どのクルマよりもおだやかでなかったのは、同じ身内の新型スペーシアギアではなかったろうか。 軽自動車のスーパーハイトワゴン市場の変遷をたどると、この市場を喚起したのは初代タントで、スズキはタントが2代目にシフトした頃にようやくパレットで追従、モデルチェンジを機に「スペーシア」に改名した。逆に、土と緑と青空が似合うSUV仕立ての軽スーパーハイトワゴン着手がいちばん早かったのはスズキで、それが先代スペーシアの途中で追加された「スペーシア ギア」だ。スペーシア ギアの成功は三菱からeKクロススペースを誘い出し、やがてデリカミニに発展、意外に遅かったのがスーパーハイト軽市場を掘り起こした当のダイハツで、4代目タントの途中で追加したタントファンクロスで参入……SUVルックの軽スーパーハイトワゴンというカテゴリーを生み出したスペーシアギアなのに、ティザーを張っても海外からやってきた1年以上前のフロンクス人気の影に隠れてしまったのは気の毒だった。 標準モデルからの派生型とはいえ、SUVルックの軽スーパーハイトワゴン一番乗りがモデルチェンジした。その新型スペーシアギアを旧型と比較していく。 バリエーション&価格 新型スペーシア ギアと現行スペーシアとの比較は、9/20の公開記事に詳しいはず。本記事では、比較対象を旧型スペーシアギアに絞って稿を進める。 今回の新型スペーシア ギアは、フルモデルチェンジといっても変わっていない部分が多いのと、そもそも本家スペーシアからの派生車種のため、機械部分も本家の新旧の違いに準じたものでしかないことをお断りしておく。 まずは機種構成。 旧型は、自然吸気660ccエンジン+モーターのマイルドハイブリッドの「ハイブリッドXZ」と、ターボ付き660cc+モーターのマイルドハイブリッド「ハイブリッド XZターボ」の基本構成2機種、それぞれが2WDと4WDを持ち、トータル4種のバリエーションとなっていた。 この布陣は、全機種マイルドハイブリッドであることも含めて新型になっても変わっていないが、車両本体価格は上昇している。 自然吸気車は2WD、4WDともに9万9330円の値上げ、ターボ車では2WD、4WD、こちらも仲良く10万7030円上がっており、総じて約5.3%の値上げ幅だ。 逆にメーカーオプションの「全方位モニター付メモリーナビゲーション+スズキコネクト対応通信機」は、旧型で21万7800円だったのに対し、新型では19万5800円と、2万2000円値下げされた。同時に、同じく従来5万2800円だった「全方位モニター用カメラパッケージ」はオプションリストから消えている(いずれも消費税込みの価格)。 パワートレーンの内訳はいくらか異なっており、従来はR06Aエンジンのターボ有無でバリエーション展開していたのに対し、新型ではR06Aをターボ付きに残し、自然吸気版はエンジンをR06Dに置き換えている。ターボ付きは最高出力も最大トルクも新旧いっしょ。いっぽう、自然吸気R06Dは旧R06Aから最高出力を発生回転数6500rpmは同じまま52psから49psに落とし、最大トルクは6.1kgm/4000rpmから5.9kgm/5000rpmへと引き下げられている。もっとも、このあたりの相違は本家スペーシア新旧の関係と同じだ。 サイズ&スタイリング 枠に制約がある軽自動車ゆえ、カタログで示される寸法値は、旧型からも現行スペーシアギアからも変わろうはずはない。全長、全幅よりも変更自由度がある全高およびホイールベースも旧型と同じだ。 スペーシア ギアはスペーシアの派生機種で、乱暴にいえば鉄板やガラスを除くパーツを変えただけの着せ替え人形。何よりも大きな外観の特徴は、黒縁めがねの目みたいなヘッドライトだ、もし後発組のタントファンクロスやデリカミニが同じ造形をしたらどうしたってスペーシアギアになってしまっただろう。それくらい強い個性を生み出した当のスズキがこの顔を新型スペーシアギアに踏襲するのに何ら遠慮する必要はないが、逆にこのライトのせいで、ぱっと見ではどちらが新型なのかわからないほど代わり映えしないように映るのは皮肉だ。 フロントではまんまるお目めのライトと黒い太縁はそのままに、太縁はサイドにまわり込んだ後の輪郭形状が異なっているし、ラジエーターグリルに目をやれば、旧型はタテ3つのブロックを互い違いに並べていたのに対し、新型ではいつぞやのジムニー特別仕様車を彷彿させるメッキの5つ穴グリルに変わっている。バンパーは、旧型では未塗装部分を意識的に残してSUV感覚を与えていたが、新型でのブラック部分はターンシグナル&フォグライトまわりにとどめられている。 樹脂色のサイドモールの太さ違い、フロントとは対照的に樹脂とシルバーの加飾ですませたリヤバンパー……仔細に比べれば違いは見られるものの、スペーシア ギア新型はライトのデザインに引きずられてマイナーチェンジの域を出ていない程度の違いしか見出すことができない。もうちょい目つきに変化を与えても良かったと思うが、これが市場にどう映るか? インテリア 中に乗り込むと、インテリアはブラック基調で、ほんわかした内装カラーを持つスペーシアよりは、ほぼブラックで引き締めたスペーシアカスタムに近い。計器盤にしてもハンドルその他操作関連にしても、造形はスペーシアやスペーシアカスタムと同一。 ただしブラック基調の中にあって助手席前のパネルやドア内張り一部を専用のカーキ色で区別した。 「電動パーキングブレーキ」「ステアリングヒーター」を「スズキ軽初」と謳い、後席シートの「マルチユースフラップ」を「スズキ初」とアピールしたのは現行スペーシアだったので、これらは当然旧型スペーシアギアにはなかった装備群。 シートや荷室はアウトドアユースを意識したスペーシアギア専用の造りになっているが、こちらは旧型スペーシアギアでも備えていた。すなわち、シートのファブリック地は撥水加工済みになっているし、荷室はブラスチック仕立ての「防汚タイプラゲッジフロア」になっていて、泥や水で汚れた上着、靴を躊躇せずに放り込めるのがいい。何もアウトドアユースといわず、幼い子を持つ家庭に向け、スペーシアにだってオプションで用意すれば喜ばれそうだ。 ボディカラー ボディ色は、2トーンが6種、モノトーンが3種のトータル9種。従来は、合計は9種だが内訳が異なり、2トーン5種、モノトーン4種だった。カラーバリエーションを眺めてみると旧型からの引継ぎ色が多い。 旧型末期との比較になるが、従来スペーシアギアの象徴で、まさに「まっ黄っ黄!」だった「アクティブイエロー×ガンメタリック2トーン」が、アイボリーに寄せた「ミモザイエローパール×ガンメタリック2トーン」と「ソフトベージュメタリック×ガンメタリック2トーン」に枝分かれした。そのためか、旧型にあったモノトーンの「シフォンアイボリーメタリック」が廃止され、同じくモノトーンの「スチールシルバーメタリック」が「モスグレーメタリック」にバトンタッチしている。 他はまるまる旧スペーシアギアから引き継がれており、カラーリングやエクストラチャージは次のとおりだ。 デリカミニやタントファンクロスを誘引したスペーシアギアが第2世代にシフトし、SUVテイストのスーパーハイト軽合戦が再燃する気配。この市場の隆盛についにホンダN-BOXも参入を果たしたばかり。 この秋から年末に向けて繰り広げられる、これら4台の大接戦に注目だ。
MotorFan編集部