反イスラエルデモで米国が炎上し、原油価格が下落したワケ バイデン政権はパレスチナ情勢の悪化を回避できるか
■ 石油の不振でサウジアラビア経済はボロボロ サウジアラビア政府は5月1日に発表した第1四半期の国内総生産(GDP)は前年同期と比べて1.8%減だった。特に石油部門の不振が続き、同部門の第1四半期は前年同期と比べ10.6%減となった。 サウジアラビアは日量1200万バレルの生産能力に対し現在の生産量は同900万バレル程度だ。原油価格が上昇しない限り、経済の低迷が続く可能性は高いだろう。 サウジアラビアとともにOPECプラスを牽引するロシアは、相変わらずウクライナ軍の無人機(ドローン)攻撃に手を焼いている。ロシアからの原油輸出に異変は生じていないが、今後の動向には要警戒だ。 米国の原油生産量は日量1300万バレル超のレベルを維持している。輸出も好調だ。輸出量が日量500万バレルを超える週もある。 若干の不安要素はあるものの、供給サイドは安定している。これに対し、需要サイドでは「原油需要がいつピークを迎えるか」についての関心が高まっている。 国際エネルギー機関(IEA)は「2030年までにピークを迎える」と予測しているが、電気自動車(EV)の販売の伸びはこのところ鈍化しており、「ピークは後ろ倒しになる」との見方も出ている*1 。 *1:EV株下落が示すもの 石油への依存、長引く恐れ(4月29日付、日本経済新聞) 投資マネーの動きを見てみると、原油価格の100ドル超えの「期待」が薄らいでいることから、ヘッジファンドなどは原油先物の買い越しを縮小し始めている。 米国がパレスチナ情勢の悪化を阻止するための外交攻勢を加速させており、中東地域からの原油供給に支障が生ずる懸念が後退している。 パレスチナ自治区ガザでの休戦を巡っては、ガザを実効支配するハマスとイスラエルがそれぞれ人質の交換を行った上で40日間の戦闘停止を行う案が議論されている。 サウジアラビアなど中東諸国を歴訪したブリンケン米国務長官は「提示された休戦案は非常に寛大であり、ハマスは受け入れるべきだ」と圧力をかけている。 米国がここに来て仲裁に本腰を入れ始めた背景には国内の政治情勢がある。