東電、重い「3グラム」 福島第1デブリ試験的取り出し 未知の領域で単純ミス、不具合 深層リポート
東京電力福島第1原発の廃炉作業で溶融燃料(デブリ)の試験的取り出しが難航している。8月の準備作業中に初歩的なミスが発覚して中断し、9月には回収装置先端部にあるカメラに不具合が起き、東電は対応に追われた。着手から取り出しまで約2週間を見込んでいた作業は、準備作業開始から2カ月以上過ぎて今月28日の再開を決めたものの先行きは不透明なまま。現場で何が起きているのか-。 ■装置改良などで3年遅れ デブリがある原子炉格納容器の内部は現在、注水などを行い温度が約20~35度に保たれ安定状態にある。しかし、施設の経年劣化などによりリスクが高まる恐れがあり、廃炉にはデブリを取り出し、安全な場所で保管することが不可欠。その技術確立には、最初に少量を採取し分析、デブリの状態を詳しく把握する必要がある。当初、試験的取り出しは令和3年の開始を見込んでいたが、装置の改良などで3度延期されて3年遅れになった。 試験的取り出しを最初に行うのは内部調査が最も進んだ2号機。原子炉格納容器の貫通部から「テレスコ式」と呼ばれる釣りざお状の回収装置を入れ、先端に付けた爪形の機器でデブリをつかむ。ただ、原子炉格納容器内は放射線量が極めて高く、作業の多くを遠隔作業で行うため困難を極める。 ■現場視点欠如「大いに反省」 準備作業に取り掛かった8月22日朝、現場で単純なミスが見つかった。原子炉格納容器側面の貫通部から回収装置を内部へ押し込む際に使う5本のパイプが、事前準備の段階で誤った順番に並べられていたのだ。 パイプを運んだのは協力企業のスタッフ。現場は放射線量が高く、作業員は全面マスクにカバーオールなどの重装備。その場で順番を入れ替える時間の余裕はなかった。限られた時間で行う難しい作業だが、パイプ運搬に関する作業方法の確認や事前訓練などは行わなかった。 ミスの背景には、過酷な環境下の作業を熟知して計画する「現場視点」の欠如や、東電社員がパイプの順番を確認しないなど「現場任せ」があった。記者会見した小野明・福島第1廃炉推進カンパニー最高責任者は「われわれの考えが及んでいなかった。大いに反省すべき」とした。 ■帯電でカメラ不具合か