東電、重い「3グラム」 福島第1デブリ試験的取り出し 未知の領域で単純ミス、不具合 深層リポート
再発防止策を講じ9月10日に作業を再開。原子炉格納容器内に入った回収装置が隔離弁を通過し、ようやく「着手」にこぎつけた。デブリをつかんで持ち上げて装置のつかむ機能を確認し、その後の作業は順調に進むと思われたが、同月17日朝になって装置に取り付けた4台のカメラのうち先端部の2台の映像が届かなくなった。作業に不可欠な〝目〟を失った東電は復旧を試みたが状況は変わらず、装置を格納容器の外に引き抜き、カメラを交換した。
調べを進めると、耐放射線能力が高いカメラでも作業中断時に電源を切り高放射線量下に置くと、帯電して不具合を起こす可能性が浮上。東電は新しいカメラの電源を入れたまま作業を進める方針だが、不具合の原因が帯電とは断定できておらず、〝綱渡り〟が続きそうだ。
総量約880トンとされるデブリのうち、試験的に取り出そうとしているのは、わずか「3グラム以下」。それが、とてつもなく重い。
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■デブリ(溶融燃料)
東京電力福島第1原発事故で、燃料棒や原子炉内の構造物などとともに溶け落ちた燃料が冷えて固まったもの。炉心溶融を起こした1~3号機には計約880トンのデブリがあると推測されている。デブリは周囲の金属などと混ざりあっており、詳しいことは分かっていない。試験的取り出しは、安全最優先で細心の注意を払って行うことが重要だ。
■記者の独り言
デブリの試験的取り出しの準備作業が始まった朝、東電の記者会見は衝撃だった。広報担当者は「デブリ回収装置を格納容器に押し込む5本のパイプが誤った順番で置かれていた」とし「本日の作業はそこまで」と告げた。信じられないミスだった。2度目のトラブルは、想像を超えた〝未知の領域〟で発生した。デブリ取り出しに立ちはだかる「壁」は、その高さも、それが何枚あるのかも分からない。(芹沢伸生)