元「パープル」「ル・フィガロ」クリエイティブ・ディレクター、クリストフ・ブルンケルが実践するクリエイティブのテクニック
フォトプリントのシリーズは、ファッション写真家のエステル・ハナニアと15年ほど継続して取り組んできたプロジェクトで、今回その作品をまとめて「ラ・ギャー・ドゥ・フ」という作品集を作りました。「ギャー・ドゥ・フ」(邦題「人類創生」)という先史時代を描いた残虐で滑稽な映画からインスピレーションを受けたものです。
ベースはコラージュと同様の考え方で、そこに身体表現を組み合わせることでどのような効果が生まれるか、実験的に取り組みました。
私は「メイクアップ」に非常に興味があります。肌に絵を描き、顔を創る行為がとても楽しいんです。紙に絵を描く行為は非生命を扱うこと。紙からのフィードバックはありません。対して身体や顔はよりインタラクティブな存在です。
作品はすべて即興で作っています。私はファッション、アート、コラージュを一種のレクリエーションであると考えていて、この作品でもエステルやモデルのエルガとのコラボレーションを心の底から楽しみました。
――アート創作やディレクションにおいて、自分自身を「不快な状態」に置き、自動書記的に思考するより前に手を動かすスタイルを実践していると伺いました。この姿勢はどのように構築されたのでしょうか。
ブルンケル:フランソワ・トリュフォーの「ランファン・ソヴァージュ(L’Enfant Sauvage)」(邦題「野性の少年」)という映画が大好きで、主人公の少年の精神や感覚にアイデアを得ています。彼は野生味にあふれ、汚れていて、自由です。私自身いつも散らかったカオスな場所で仕事をしているので、この少年の感覚に近いと思います(笑)。
ドローイングを描くときは自分の思考よりも速く手を動かす。年齢を重ねる毎に仕事が速くなり、表現も即興に近付いていきます。若い時は比較的頭も使って仕事をしていましたが、40歳を過ぎてからはより体を使って仕事をしていると感じています。
写真家のグレゴワール・アレキサンドル(Gregoire Alexandre)と制作した作品集「>°GuΣ」も即興表現です。「ヴォーグ(VOGUE)」の20年分のアーカイブを使用したイメージを作り、それを撮影したフォトプリント作品によって構成されています。表現手法はコラージュに近いですが、イメージは全て撮影中にその場で作りました。何も事前準備しない。私はこういう手法やそこで発揮されるエネルギーが大好きなんです。