元「パープル」「ル・フィガロ」クリエイティブ・ディレクター、クリストフ・ブルンケルが実践するクリエイティブのテクニック
メディアの特色として「パープル」はパンクでクリエイティブ、「ル・フィガロ」はクラシックだと思われがちですが、実際両者の間にそれほど違いはありません。あえて言えば「ル・フィガロ」の方が多少表現がストレートでしょうか。
ただし、メディアを取り巻く環境の違いはあります。「フィガロ」は“現実“を扱い、クライアントや広告が存在し、記事の内容や写真撮影についてコントロールしなければならない点もあります。メディアの規模が大きいため、プロジェクトはスローペースで進みます。
一方「パープル」は“白紙委任状“のようなもの。アーティストと協働し、彼らに自由な創作の場にしてもらうことを楽しみながら、スケートボードのようにスムーズな疾走感を伴って進行します。
私の場合「パープル」からキャリアが始まりましたが、アンダーグラウンドは10代の若さのエネルギーがなし得ること。一生このフィールドにいることはできません。イギー・ポップ(Iggy Pop)のようにアンダーグラウンドから始まって商業のフィールドに進んでいくのは普通のことでしょう。
自分自身のアート表現は常にアンダーグラウンド的ですが、クリエイティブディレクターという仕事の性質は違います。「ル・フィガロ」で働けば働くほど、このバランスを保つために自らのアート表現を発展させてきました。
――コラージュ作品は「不快感」がテーマでした。今回発表されたフォトプリントも、現実から乖離したような不穏さやグロテスクに近い強烈なインパクトが脳裏に焼き付けられますが、どのようなテーマで創作されたのでしょうか。また、肉体をキャンバスの延長として捉えることをはじめ、写真家やモデルとのコラボレーションによって、コラージュ作品とは異なる表現に挑戦した点を教えてください。
ブルンケル:今回展示しているコラージュ作品は私がこれまで「フィガロ」のオフィスで制作したものです。パリのオフィスでは、机上に毎日置かれるたくさんの新聞の中に豊富な素材があるので、コラージュを作っていたんです。普段は昼食を取らず、ランチタイムを制作の時間に充て、毎日3、4枚のコラージュを制作していました。