「どうせ自分には」という思い込みが、できるはずのことまで本当にできなくしてしまい…を崩すには?
「メタ認知」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。「メタ」とは「高次の」という意味で、つまり認知(記憶、学習、思考など)を、高い視点からさらに認知することを指します。三宮真智子大阪大学・鳴門教育大学名誉教授によれば「メタ認知は自分の頭の中にいて、冷静で客観的な判断をしてくれる<もうひとりの自分>。活用次第で頭の使い方がグッとよくなる」だそう。先生の著書『メタ認知』をもとにした本連載で、あなたの脳のパフォーマンスを最大限に発揮させる方法を伝授します! 【書影】三宮先生が「頭」をよりよくする方法を伝授!『メタ認知』 * * * * * * * ◆いつも諦めの気持ちが先に立つ中学生の話 ある成績のよくない中学生がいました。 彼は英語も苦手で、簡単な英単語も積極的に覚えようとしません。自分はどうせ勉強ができないのだという諦めの気持ちが、いつも先に立つのです。補習塾に通っていたのですが、やる気も今ひとつという状態で、なかなか成果が上がりません。 ある時、塾の講師が、彼にも答えられそうな問題を出しました。 「『始める』は英語で何て言う?」 中学生は、間髪を入れずに答えます。 「わかりません」 講師は、さらに易しい問題を出します。 「それじゃ、『飲む』は英語で?」 再び、中学生からは、同じ答が返ってきます。 「わかりません」
◆質問の仕方を変えてみた うーん、わからないはずはないのにな……と困惑する講師。 そこで、質問の仕方を変えてみました。 「陸上競技で、選手が最初に並ぶ線は何ライン?」 「……スタートライン? あ、そうか。『始める』はスタートかな」 「飲食店で、メニューに書いてある飲み物は、ソフト何?」 「……ソフトドリンク。あ、だから『飲む』はドリンクか!」 このように、その中学生は、わかるはずのことを最初から諦めていて、考えようとしなかったのです。でも、講師の巧みな誘導によって、自ら考え、答えることができました。