「震災を知らない世代に何を伝えたいですか」…関西学院大生が若い世代を意識した防災動画制作に一役
阪神大震災を経験していない若者世代をターゲットに、兵庫県西宮市は関西学院大学(西宮市)、民間企業と共同で、防災について啓発する動画を制作している。大学生の「等身大の言葉」を伝え、同世代への防災意識の浸透を図るのが狙いだ。震災発生から30年となる来年1月17日までに完成させ、若者ユーザーが多い動画共有アプリ「TikTok(ティックトック)」で配信する。(中山真緒) 【写真】インタビュー風景をスマートフォンに収める学生ら(兵庫県西宮市で)
市にとって、若者への啓発は課題だった。防災イベントを開いても、参加者は中高年ばかり。20~30代では特に、防災活動に取り組む人の割合が低いという。
こうした状況を改善するため、市が利用したのが、官民連携で社会課題解決を目指す県の「ひょうごTECHイノベーションプロジェクト」。解決策を募集し、インターネット動画の制作・配信を手がける「瀬戸内サニー」(香川県)と提携。同大学には、防災を学ぶ学生にアイデア提案や撮影で協力してもらう。
今月中旬にあった動画制作では、瀬戸内サニーの大崎龍史社長(35)が講師として参加。学生8人と話し合いながら内容を決め、動画作りのノウハウを教えた。
学生らは早速、キャンパスへ。授業に向かう学生や散歩に訪れた住民らに「地震が起きた時、何か三つ持って行けるとしたら、何にしますか」、「震災を知らない世代になにを伝えたいですか」などと話しかけてマイクを向け、その様子をスマートフォンで動画に収めた。
大崎社長らが「雷が直撃するのと、高さ1メートルの津波に遭うのと、死亡率が高いのはどっち」などの2択クイズを出題、一列に並んだ学生が合図とともに答えにジャンプで移動するなど、若者の興味を引くためのエンターテインメント性も取り入れている。
市防災危機管理課の松田成弘課長は「今までの啓発動画より、若者に見てもらえる動画になると思う」と期待する。
インタビューした社会学部2年の学生(20)は「年代によって答えが違うのが興味深く、震災経験者が『命を大事に』と絞り出した言葉に重みを感じた。自分たちも分からないことを質問して、みんなで一緒に学んだり考えたりできた。動画を見た人が、一瞬でも防災について考えてくれたらうれしい」と語った。