「雇用調整助成金」の不正受給公表が累計1,446件 全国ワーストは愛知県、年商を上回る不正受給は31社
業歴別 10年未満が4割超、特例措置後の起業は74社
雇調金等の不正受給が公表された企業で、業歴が判明した1,089社について分析した。最多は、10年以上50年未満の493社(構成比45.2%)で半数近くを占めた。次いで、5年以上10年未満303社(同27.8%)、5年未満146社(同13.4%)が続き、10年未満が合計449社(同41.2%)で4割超に達した。 一方、業歴100年以上の老舗企業23社を含む50年以上は合計147社(同13.4%)で1割超にとどまった。 なお、雇調金の特例措置が始まった2020年4月以降の起業は74社で、9-10月で16社増加した。
年商対比 年商以上の不正受給が31社
直近の売上高が判明した482社について、不正受給額と対年商比を分析した。最多は、年商比10%未満の172社(構成比35.6%)で3割超を占める。年商比の小さい順に多く分布し、50%未満が402社(同83.4%)と8割超を占めた。 一方、年商比100%以上と年商を上回る不正受給は31社(同6.4%)が判明した。売上規模を大きく上回る不正受給は、常識的には考えにくいだけに、その理由を追求すべきだろう。 ◇ ◇◇ コロナ禍での雇調金支給は、営業自粛や人流抑制などで休業や営業縮小を余儀なくされた企業で働く従業員の雇用維持に寄与し、事業規模を問わず多くの企業が支給を受けた。 一方で、迅速な支給を目的とした手続きの簡素化を悪用した不正受給が頻発した。厚生労働省によると、各都道府県労働局の遡及調査で発覚した不正受給は非公表企業を含めて、2024年9月末で3,603件、支給決定取消金額は815億5,000万円に及ぶ。 コロナ禍の特例措置は2023年3月に終了したが、不正受給の公表は後を絶たない。公表された企業は、コンプライアンスやコーポレートガバナンスの不全企業としてみなされ、取引先や金融機関からの信用低下を避けられない。また、違約金と延滞金を受給金額に加えた返還を求められるため資金難に陥る可能性もあり、公表企業の動向が注目される。