運命的な引退セレモニーも広島MF青山敏弘「最終章を書き直せるくらいのドラマを作ります」ACL2先発予定→J1最終節逆転Vへ
[12.1 J1第37節 広島 5-1 札幌 Eピース] 運命的な巡り合わせの引退セレモニーだった。今季限りで現役生活を退くサンフレッチェ広島MF青山敏弘にとって、ホーム最終戦の対戦相手・北海道コンサドーレ札幌を率いるペトロヴィッチ監督は18年前にJ1デビューを飾った際の指揮官。後半37分にピッチに立つ際には異例のハグもかわし、ピッチに足を踏み入れていた。 【動画】アウェー中国戦の裏で起きていた珍事…日本代表FWがSNS上の声に反応「わざと」 「ミシャがいなければ自分は存在していないし、ここまで素晴らしいキャリアを築けることはなかった。ミシャさんは恩人。ミシャさんに認めてもらえるようにピッチ上でプレーしてきたし、ミシャさんに褒めてもらえるように教えを守ってきたつもりなので、こういう形で最後、広島で一緒に戦えたことは一生の思い出になる」(青山) 2004年、岡山県作陽高から広島に加入した青山は負傷の影響もあり、プロ2年目までのJ1リーグ戦出場はゼロ。それでも06年夏、ペトロヴィッチ監督が就任すると、初陣でさっそく先発に抜擢され、そこから華々しいキャリアがスタートした。 そんな青山はペトロヴィッチ監督がクラブを離れた後も一貫して感謝を表現し続けており、2015年のJリーグMVP受賞時には指揮官がライバルの浦和レッズ監督として4年目を迎えていたにもかかわらず、表彰式の壇上で「ミシャ!ダンケシェン!」と熱いメッセージを送ったこともあった。 それほどの恩師との運命的な再会。セレモニーの壇上では広島で自身を指導した指揮官全員を立て、全員に感謝の言葉を送った青山だったが、「ミシャも喜んでくれているし、自分も喜ばしく思っている。もしかしたらミシャも僕がいなければここにいないかもしれないし、それだけ僕たちが作り上げたものは大きかった。最後に感謝を伝えられて良かった」と感慨はひとしおだったようだ。 もっとも、そんな感動的な引退セレモニーを終えた青山だが、選手としての仕事をここで終わりにするつもりはない。広島はこの日の勝利により、8日に行われる最終節・アウェーG大阪戦での逆転優勝の可能性をキープ。大一番の直前の5日には、すでにグループリーグ突破が決まっているACL2のホーム東方足球隊が控えており、青山は先発出場が見込まれている。 ミヒャエル・スキッベ監督は試合後の記者会見で、今季限りで退団が決定しているMF柏好文にも触れながら「ホーム最終戦で良いお別れができたと思うが、木曜日の試合では彼ら2人にも頑張ってもらいたい」と起用を明言。プレータイムについても「足が持つまで走ってもらう」と冗談まじりに期待を口にしていた。 青山も試合後、引退セレモニー後の異例のホームゲーム出場に向けて「そこも含めて、最後の最後まで自分は戦い続ける。それは間違いない」と断言。またACL2だけでなく、大一番のG大阪戦にも選手として本気で向き合っていくつもりだ。取材エリアではセレモニーでのスピーチを準備する際に感じた葛藤も引き合いに出しつつ、優勝への並ならぬ熱意を口にした。 「(引退セレモニーのスピーチとは)向き合えない時間があった。自分の中で向き合いたくない自分がいた。チームが優勝争いしている時に自分だけそっちに行くというのができなくて、もともと大枠は考えさせてもらっていたけど、突き詰めて考えたのはここ3日間くらい。みんなと同じ方向を向いてやりたかったので、うまく伝えられたかはわからないけど、気持ちはきっと伝わっていると思うし、そこだけは自信を持って言える。ただ、これで終わりという気持ちが全くしないのは自分がそれを求めているからだと思う。この続きをもう一回、最終章を書き直せるくらいのドラマを作ります」