上司に「最低な人間です」と誹謗中傷メールを送った部下に対する降格処分は認められる?認められない?
こんにちは。 弁護士の林 孝匡です。 宇宙イチわかりやすい法律解説を目指しています。 ――部下のXさんから何とメールが届いたんですか? 【グラフ7枚】自分の上司を「良い上司だと思わない」理由…1位は?20~35歳の会社員に聞いた、上司と部下の関係についての調査結果をグラフで全部みる! Y部長 「『ご自分の保身のためだけに、お仕事されるんですね』『最低な人間です』とメールがきました……」 ――なかなかパンチの効いた部下ですね! Xさんの業務拒否などもあり、会社はXさんを降格処分としました。そして、これに納得できない部下が提訴。 降格処分はOK?NG?果たして裁判所の判断は!(東京高裁 R4.9.22) 以下、わかりやすく解説します。 ※ 実際の判決を基に構成 ※ 判決の本質を損なわないようフランクな会話に変換 ※ 争いを一部抜粋して簡略化
登場人物
▼ 会社 物流アウトソーシング業務、マタニティ市場のマーケティングなどを行っている会社 ▼ Xさん ・女性(正社員) ・メディア企画事業部で勤務 ・おもに4人体制(Y部長、Xさん、あと2名) 部下のXさんは仕事が超デキたようです。入社して1年ほど経ったころには優秀社員表彰を受け、次長職に昇格するというマッハ昇進っぷりです。
Y部長と衝突
Xさんは「自分の業務量が多い……」と感じていました。というのも、Y部長が昼前に出勤し、早い時間に退社することが多かったからです。そのしわ寄せが部下にきていたのでしょう。 Xさんは不満をYさんにぶつけ、役員のZ専務にも抗議。 Z専務には以下のように窮状を訴えていました。 「Y部長と考え方・方針が違いすぎており、今後協調して業務をこなすことは困難です」「既存業務に追われており、私ともう1人の社員の2名体制では営業活動がままならないです」 しかし、これといった改善がなされず、Xさんは不満を募らせていきました。そして、だんだんとXさんとY部長の関係は悪化していきます。
誹謗中傷メール
不満が頂点に達したのでしょう。 ある日、Xさんは、Y部長が取引先に送信したメールに激怒。 Y部長へ ↓ こんなメールを送信しました。かなりブチギレています。 「何も状況がわかっていない状況で、その場しのぎのメールを送るの辞めて頂けませんか。 内容を把握し、現状の配布状況を見て、お知らせすべき案件です。いつもそういう風に、都合よくしゃしゃり出てきて、肝心のクレーム処理の時だけ、人任せにするのは、人間的に最低です。 私がメールしていないということは、今日お知らせする必要がないからです。本当に、部のお考えではなく、ご自分の保身のためだけに、お仕事されるんですね。最低な人間です」(原文ママ) (判決文より引用) ブチギレすぎて人格非難にまで発展していますね……。 ちなみに、この頃からXさんは、Y部長とのトラブルなどが原因で精神に不調を来たしていました。