「乗りやすいスーパースポーツの究極形」完全新規モデル、ヤマハ『YZF-R9』はなぜ生まれたのか?
R9は、前後にKYB製のサスペンションを装備する。フロントは、43mm径の倒立フォークで、もちろんフルアジャスタブルでのセッティングが可能だ。左右それぞれのフォークにベースバルブが追加され、オイルの流入や圧力を最適化することによって、ストローク時のレスポンスが向上。リアにも極低速域のストロークを司るスイングバルブが組み込まれ、ストローク感と、それにともなうフィードバックがより明確になっているという。これらはいずれもKYB独自の技術であり、ヤマハと共同で開発が進められた。
◆R9はれっきとしたスーパースポーツであり、レーシングDNAを忘れていない
R9は扱いやすい。しかし、れっきとしたスーパースポーツであり、レーシングDNAを忘れていない。トークショーの中、そんな言葉が兎田さんからも津谷さんからも聞かれた通り、欧州ではすでにレース仕様が発表されている。
津谷:「日本ではまだ出られるレースがありませんが、2025年のワールドスーパースポーツ選手権に参戦することが決まっています。このクラスは近年縮小傾向にありましたが、レギュレーションの変更によって、参戦できる車両が拡大。それを踏まえ、欧州の拠点と協力しながらレースベース車も並行して開発してきました」
そう聞くと、R9もまた、ライダーのスキルと走るステージを選ぶマシンとして送り出されそうなものだが、欧州仕様のスペックを見ると(日本仕様は未発表)、水冷直列3気筒エンジンの最高出力は119ps/10000rpmであり、これはMT-09と同じである。つまり、R6のような超高回転型になっているわけでも、R1のようなパワーが追求されているわけでもない。
兎田:「R9の役割のひとつとして、ライダーが成長できるモデルというものがあります。スーパースポーツの頂点に至るための厳しく、険しいルートがR6とR1だとすると、その急登をなだらかにしてくれる別ルートが、このR9。たとえるなら、そういうイメージです。目指すところは同じでもカバーする範囲が広く、クルーズコントロール等の快適性も備えているところが特徴です」