「乗りやすいスーパースポーツの究極形」完全新規モデル、ヤマハ『YZF-R9』はなぜ生まれたのか?
津谷:「R6やR1のライディングには、独特の緊張感がともないます。それを緩和するため、いかにアクセシブル(とっつきやすい)であるか、そして、いかにアフォータブル(手の届く価格)であるかをキーワードに、開発が始まりました。ディメンジョンやアライメントは、スーパースポーツのセオリーに則ったものでありながら極端すぎず、たとえばまず、ライディングポジションがアクセシブルです。ハンドル位置はR7と同じくらいですし、ステップ位置を下げることによって、このカテゴリーのモデルとしては、足元もゆったりしています」
◆フレームはR9専用にして、完全なる新作
エンジンやスイングアームは、『MT-09』のものがベースになっている一方、フレームはR9専用にして、完全なる新作である。
津谷:「当初は、MT-09にカウルを装着して開発が始まりました。それはそれで一定のレベルにあったとはいえ、果たしてそれをスーパースポーツと呼んでいいのかと自問自答。MT-09はそのキャラクター上、軽快なハンドリングに仕立てられていますが、R6を仮想ライバルにするR9の場合は、しっかりとフロントに荷重を掛けられるようにしたい。すると、必然的にハンドルはセパレートタイプのものをトップブリッジ下にセットすることになるわけですが、MT-09ベースの車体だと、実用面ではハンドル切れ角がまったくなくなってしまいます。また、剛性面でも物足りなさが出てくるため、結果的に新作になりました」
MT-09よりも剛性に優れ、R6よりもしなやかな特性を持つ重力鋳造のアルミデルタボックスフレームは質量にも優れ、ヤマハの歴代スーパースポーツ最軽量となる9.7kgの単体重量を実現。それを支えるサスペンションもまた、新世代のものとなる。
津谷:「Rシリーズを名乗る以上、足まわりも最先端、あるいは最高峰であるべきと考えました。事実、R9に採用されたサスペンションは、2025年型のR1と共通のもので(セッティングは異なる)、さらに言えば、中須賀選手や岡本選手が乗っているファクトリーマシンの仕様とほぼ同じ構造です。生産車はその用途を踏まえ、フルボトムの領域を調整しているに過ぎません」