“由伸ロス”で厳しすぎる「沢村賞」に改革機運も…“大投手への敬意”より厄介な“抵抗勢力”とは?
現代野球で“基準全クリア”は至難
さる捕手出身の元NPB球団監督が指摘する。 「先発投手はメジャーに倣って100球が交代のメドになっています。ですが、登板間隔はメジャーのような中4日、中5日という短いものではなく、週1度(中6日)が主流になっています。DH(指名打者)制度があって(代打を出されづらいため)先発が長いイニングを投げやすい環境にあるパ・リーグでさえ、今のローテーションの下では10完投や20イニングは非常に難しいです」 3年連続の山本の前に受賞した20年の大野雄大投手(中日)は3項目しか満たしていなかったものの、新型コロナウイルス禍でシーズンが143試合から120試合に短縮となったことを考慮された。19年は受賞者なしで、文句なしの受賞となると、やはり18年の菅野が最後と言える。 近年は山本という突出した存在に表彰を頼ってきた側面が否めず、基準の緩和という課題は早くから潜在化していたのだ。堀内委員長は今後の見直しについて「本当は変えたくない」と前置きした上で「数字が出てこないとなると、完投数や投球回数は少し考えていかなくてはいけない。時代に即したものにしていったほうが、選手が基準に乗りやすいと思う。時期的にまだ違うと思うが、そういう話し合いになる可能性はある」と含みを持たせる。
現代野球で“基準全クリア”は至難
アマチュアのトップクラスの選手たちは将来的なメジャー挑戦を夢見てプロの門を叩く。現役生活で2000安打や200勝の記録が現実味を帯びてくれば、狙いを定めることはあっても、プロ入り時に名球会入りを目標に掲げる選手は皆無に近い。基準が時代に即さない栄誉になりつつある賞ならなおのことだ。前出の元監督は「頑張れば届くのではなく、どう頑張っても届かないのではあれば、選手は賞を取りにいこうとは思えません。目指す選手がいてこその賞で、今の沢村賞はこの点が一番の問題なのではないでしょうか。該当者なしが頻発するようでは表彰そのものの意義が問われかねません。堀内さんの言葉では、すぐにではないとも受け取れましたが、待ったなしの状態だと思います」と強調する。 MLBのサイ・ヤング賞では救援投手も対象に含まれる。さらに沢村賞のような明確な基準がなく、記者投票による選出だ。位置づけとしてはまさに「最優秀投手」かもしれないが、“持続可能性”という点で沢村賞が倣うことは一考に値するのだが……。 堀内氏は「僕一人で決められるわけではない」と語ったように、前出の元監督によると、選考委員会の各委員をはじめ関係各所で意見をまとめられるかどうかに懸念があるという。