”空力の鬼才”の名は伊達じゃない! エイドリアン・ニューウェイが手掛けたF1マシン傑作選
マクラーレンMP4-13(1998年)
マシンの幅が狭くなり、グルーブドタイヤが投入された1998年のF1。ニューウェイはMP4-13のデザインで正しいことを全てやってのけたと言えるだろう。彼は荷重移動を最小限に抑えるため、車体の重心を著しく下げた。ただフェラーリのミハエル・シューマッハーも手強く、激しいタイトル争いへと発展。しかし結局ミカ・ハッキネンが8勝を挙げ、初のドライバーズタイトルを獲得した。
レッドブルRB9(2013年)
レッドブル黄金時代、最盛期の1台。またV8エンジン時代最後のチャンピオンマシンである。これで、セバスチャン・ベッテルが通算4度目のタイトルを獲得。ベッテルはこの2013年に13勝。ベルギーGPから最終戦ブラジルGPまでは、破竹の9連勝を達成した。RB9のパフォーマンスは非常に良かったが、トリックエンジンマップなど、幾つかの疑惑の的ともなった。この翌年から、F1はV6ターボ+ハイブリッド時代に突入。メルセデスの天下となっていく。
ウイリアムズFW15C(1993年)
史上最もハイテクなF1マシンだとも言える1993年のウイリアムズFW15C。FW14Bとは異なり、最初からアクティブサスペンションありきで開発が行なわれたマシンだ。ニューウェイはエアロパッケージを精査し、前面投影面積を減らすことに成功。これにより、ハイダウンフォースが必要となるサーキットでは、リヤウイングを巨大化させる余裕が生じた。 またABS(アンチロック・ブレーキ・システム)も搭載し、アクティブサスペンションを活用することで、メインストレートでのレーキ角を調整できるようになっており、最高速を発揮するのに役立った。ある意味、現在のDRSの根源とも言える。 アラン・プロストは1992年を休養に充て、1993年に復帰。自身4度目のタイトル獲得をあっさり決めた。しかしプロストは、このシーズンのみでF1から引退することになる。またデイモン・ヒルは、ブラバムから一気にトップチームに昇格し、この年3勝を挙げる活躍を見せた。
レッドブルRB19(2023年)
名実ともに、F1最強と言える1台が、レッドブルRB19だ。2023年シーズンの全22戦中21勝という輝かしい成績を残した。これはF1の歴史上、年間の最高勝率記録を樹立するものである。レッドブルは2022年に導入された新レギュレーション下でいち早く、速さを発揮するための要点を掴んだ。 2022年に計17勝を挙げたRB18をさらに進化させたRB19は、まさにライバルを圧倒する速さ、強さを見せた。当然、この偉業はニューウェイひとりの力で成し遂げられたわけではないが、2024年のレッドブルが苦戦していることを考えると、その貢献は考えられている以上に大きいのかもしれない。
Charles Bradley