“紀州のドン・ファン”事件 元妻の28歳被告に無罪判決
18年に「紀州のドン・ファン」と呼ばれた和歌山県田辺市の資産家野崎幸助さん(当時77)を殺害した罪に問われた元妻須藤早貴被告(28)の裁判員裁判で、和歌山地裁(福島恵子裁判長)は12日、被告に無罪を言い渡した。 【写真】野崎幸助さんと腕を組み笑顔の元妻・須藤早貴被告 須藤被告は18年5月、野崎さんに何らかの方法で致死量の覚醒剤を摂取させ、殺害した罪に問われていた。 犯行を立証する直接証拠に乏しい中、検察側は9月から11月7日まで18回の裁判で、28人という異例の数の証人尋問を行った。須藤被告が薬物を購入したとする元売人は法廷で「覚醒剤4、5グラムを売った」と証言。また、スマートフォンのアプリから、須藤被告が野崎さんの死亡当日に家の1階と2階を8度も行き来していた行動が確認されたこと、死亡前後に「覚醒剤 死亡」「完全犯罪」などといった言葉をネット検索していたことなど、あらゆる状況証拠を積み重ねた。 13億円ともいわれる野崎さんの財産目当てだったとの指摘もあり、「楽をして遊ぶためのお金を得るためという動機は、極めて悪質で、人命軽視もはなはだしい」などとして、被告に無期懲役を求刑していた。 一方で須藤被告は、ネット検索について「不気味な事件を調べることは好きだった」と、あくまで興味からの検索だったと主張した。事件性、犯人性ともに否認しており、「もうちょっと死に方を考えて欲しかった。あのタイミングで死んだせいで、何年も人殺し扱いなので」とも証言していた。弁護側も「薄い灰色を何回重ねても黒にはならないんです」などとし、無罪を訴えていた。 真っ向から食い違う双方の主張に、どういう判断が下されるのか、注目されていた。