イーロン・マスクの"娘"はトランプにすり寄る父に幻滅…アメリカで再燃している「女子トイレ問題」の深刻さ
同メディアによると、トランプ氏の大統領選での勝利を受け、トランスジェンダー擁護派の活動家たちの間に、姿勢を軟化させる動きが見られるという。 一部の活動家たちは、従来の戦術に問題があったことを認めている模様だ。ジェンダーや中絶に関する言葉の規制、「彼」「彼女」「彼ら」など特定の代名詞の使用の強制、トランスジェンダーの人々への誤った性別呼称を暴力行為とみなす主張などが、かえってトランスジェンダーへの反発を助長していたという。 トランスジェンダーの権利擁護団体「アドボケーツ・フォー・トランスジェンダー・イクオリティ」のエグゼクティブディレクター、ロドリゴ・ヘン=レティネン氏は、同メディアの取材に対し、「私たちの側に立っていないからといって非難してはいけない。誰もそのような対立的な立場には加わりたくないはずだ」と語っている。 なお、フォックス・ニュースは共和党寄りの報道姿勢で知られており、本件に関してもトランスジェンダー擁護派が一定の譲歩を受け入れたように読み取れる。しかし、より柔軟な姿勢が打ち出されたことで建設的な議論への土壌が生まれたと捉えれば、双方にとって好ましい動きと言えそうだ。 ■分断を超え、対話による解決が求められている トランスジェンダーを巡る議論の行方は、米社会が抱える分断の象徴とも言えそうだ。 トランプ氏は任期1期目、人種問題をめぐりアメリカの世論を分断し、結果として熱心な支持者を取り付ける戦略を採用した。今回も反トランスの強硬姿勢を掲げ、保守層の支持を固める戦略として一定の効果を上げているが、その代償として社会に深い亀裂を生んでいる。 その一方で、トランスジェンダーの権利活動家たちの間では新たな動きが見られる。これまでの対立的なアプローチを見直し、批判派との対話を模索する姿勢は、分断を乗り越えようとする建設的な一歩と言える。 トイレ使用や学校教育、スポーツ参加など、具体的なシーンを想定した権利の保障については、引き続き慎重な議論が求められるだろう。個人の尊厳を守りながら、社会全体の調和をいかに実現していくか。その解を見出すには、対話が不可欠だ。 政治指導者の思惑に左右されることなく、一人一人の人権が尊重される社会の実現に向け、建設的な議論が望まれる。容易な道のりではないが、現代社会が避けて通れない重要な課題となっている。 ---------- 青葉 やまと(あおば・やまと) フリーライター・翻訳者 1982年生まれ。関西学院大学を卒業後、都内IT企業でエンジニアとして活動。6年間の業界経験ののち、2010年から文筆業に転身。技術知識を生かした技術翻訳ほか、IT・国際情勢などニュース記事の執筆を手がける。ウェブサイト『ニューズウィーク日本版』などで執筆中。 ----------
フリーライター・翻訳者 青葉 やまと