イーロン・マスクの"娘"はトランプにすり寄る父に幻滅…アメリカで再燃している「女子トイレ問題」の深刻さ
■トランプ支持で父娘の絆に亀裂 英ミラー紙は、マスク氏とウィルソン氏の確執について詳しく報じている。もともとウィルソン氏は、父マスク氏について「性別移行の過程で支援的でなく、関与も少なかった」と非難していた。 現在20歳の長女・ウィルソン氏は、トランプ前大統領の再選が決まったことを受け、米国を離れる意向を表明。Threadsに「しばらく考えていたけれど、昨日の選挙結果で明確になった。私はアメリカに自分の未来を見出せない」と投稿した。 現在の父娘関係は、2022年に決定的な転換点を迎えた。この年、ウィルソン氏は父親との関係を絶つため、法的に名前と性別の変更手続きを行った。 ウィルソン氏は、父親のソーシャルメディア上での近年の発言について「麻酔薬ケタミンの影響による混乱した状態」から生まれたものだと批判。さらに、マスク氏が「インセルやピックミーの軍団」から「必死に」承認を求めているとも指摘した。 インセルとは「非自発的な独身者」を意味する造語で、女性に対して敵意を持つオンラインコミュニティーを指す。ピックミーは、男性からの評価を上げようとして他の女性を批判する女性を表す若者言葉だ。マスク氏がこうしたコミュニティーに近づこうとしている、とウィルソン氏は批判する。 なおマスク氏には、最初の妻であるジャスティン・ウィルソン氏、音楽家のグライムス氏、脳科学技術企業ニューラリンクの幹部シボン・ジリス氏との間に、ウィルソン氏を含めて計12人の子どもがいる。 ■共和党が97億円を投じた反トランス広告 以前から続いていたマスク氏と娘のわだかまりは、トランプ氏の米大統領選勝利をもって決定的断裂に至った。 マスク氏の支持を取り付けたトランプ陣営は選挙戦で、トランスジェンダーに対する猛烈な批判を繰り広げていた。性自認に基づくトイレ利用(例えば女性を自認する人が女子トイレを利用すること)をめぐり、猛烈な批判を展開している。ウィルソン氏のように深く傷つくトランスジェンダーの市民を生んだ一方、この方針が広くアメリカ市民の賛同を生み、トランプ氏勝利の一助となったとの見方も出ているようだ。 ニューヨーク・タイムズの分析によると、今回の大統領選挙運動で共和党全体として、トランスジェンダーを批判するテレビ広告に6500万ドル(約97億円)以上を投じている。トランプ陣営単独でも、総額3700万ドル(約55億円)超、すなわち全TV広告予算の約2割をトランスジェンダー問題に関する広告に投じた。 このうち代表的な広告では、対立候補のハリス氏が「刑務所のすべてのトランスジェンダーの受刑者が(性別適合手術を)利用できるようにする」と述べた5年前の映像を使用。この映像に重ねる形でナレーションを流し、「カマラは(トランスジェンダーの)彼ら/彼女らのためにある。トランプ大統領はあなたのためにある」と、反トランスジェンダーの立場を鮮明にした。 トランプ氏は「過激なジェンダーイデオロギー」を推進する学校への連邦資金カットを公約に掲げ、性別適合医療についても「児童虐待」に当たるとして非難する姿勢を見せている。