樹木が生息する土壌に特有の微生物が落葉を効率的に分解、東大など実証
日数の経過でコメツガとイヌブナそれぞれでどれだけ落葉が分解するかを、①高標高土壌をその場に移植して高標高地に置いたもの(高標高地×高標高土壌)、②高標高土壌を低標高地に移植して置いたもの(低標高地×高標高土壌)、③低標高土壌をその場に移植して低標高地に置いたもの(低標高地×低標高土壌)、④低標高土壌を高標高地に移植して置いたもの(高標高地×低標高土壌)――の4つに分類して比較した。
その結果、コメツガでは高標高土壌である前者2つ、イヌブナでは低標高土壌である後者2つで分解率がおおむね高かった。コメツガ、イヌブナとも移植後に置いた環境より、樹木が育っていた土壌であることが分解を促進することが分かった。
土壌と微生物の関連については、遺伝子解析によって、高標高地と低標高地の土壌に特有の真菌や細菌をそれぞれ特定。微生物とコメツガとイヌブナの落葉分解率の関係を調べると、それぞれの標高地に特有の菌が多いほど、分解率が上がっていることを確認できた。ホームフィールド・アドバンテージ仮説を裏付けているという。
天然林ではシカの増加で下草が食べ尽くされて土壌がむき出しになったり、病気による枯死が広まったり、極端気象による倒木が起きたりなどしている。これら土壌撹乱が微生物叢に影響を与え、落葉分解の進行を妨げて物質循環に支障を来す恐れもある。平尾講師は「今後さらに研究を進めることで微生物と落葉分解の関係性が土壌の炭素蓄積に果たす役割なども明らかにし、土壌微生物まで含めた森林保全を目指したい」としている。
研究グループは東京大学と千葉大学で構成し、成果は5月12日に植物科学誌ニュー・ファイトロジストの電子版に掲載された。