「黒部ダムカレー」関西初登場 建設現場で愛されたもの継承
さわやかな辛さが体を吹き抜ける
改めて大阪・中之島「アゴラシオン」の黒部ダムカレーをみてみよう。ご飯でできたアーチ式ダムの白いえん堤。レーズンやオリーブ、ピクルスが彩りを添える。えん堤の外側にはカレールーのダム湖が広がり、遊覧船に見立てた特製ミンチカツが浮かぶ。ミンチカツの上にはあぶったモッツァレラチーズがのり、トマトピューレの赤がアクセントに。遊覧船の周囲に描かれた白い航跡は、生クリーム仕立てだ。 実食すると、カレーの心地よい辛さがさわやかな風になって体を吹き抜けていく。とろりと溶けたモッツァレラチーズが地中海へいざなう。黒部ダムは雪深い北陸にあるが、陽光降り注ぐイタリアの黒部ダムといったところだろうか。 イタリアンレストランであり、カレーは初めての挑戦だった。担当者は「やや凝り過ぎた感があるほど、当店らしさを盛り込んでみました。特に女性客に『とてもかわいい、食べても美味しい』と、ご好評をいただいています」と話す。厨房で調理過程を取材した。黒部ダムカレーの「建設現場」は、料理人たちが手間を惜しまない繊細で感性豊かな世界だった。
若い世代も昭和の黒部ダム物語に関心を
平成生まれ世代がビジネス最前線で活躍する現在、昭和の黒部ダムプロジェクトのインパクトを知らない人たちが増えてきた。イベントを企画した同社マーケティング経営本部の井狩博文さんは「狙いが2つありました」と前置きして、次のように話す。 「1つは黒部ダムの地元を盛り上げたかった。もう1つは関西での黒部ダムのアピール。ダム建設から半世紀あまり経過した今、関西の若い皆さんにも、カレーを通じて黒部ダムの成り立ちや存在意義に、今いちど思いをはせていただきたい。できれば現地へ足を運び、黒部ダムの雄大な景色を体感してください」 関西電力発行の「関西電力五十年史」は、こう記す。 「クロヨン(黒部ダム)は着工以来7年の歳月を費やし、延べ1000万人の労力と513億円の費用を投じて完成された。クロヨンの建設は、土木建設技術・水力発電技術史上において、また、関西電力の経営史上にも大きな意義をもつものであった」 男たちの熱い思いを受け継ぐ黒部ダムカレー。記憶に残したい昭和の味コンテストなどがあれば、ぜひノミネートしたい一品だ。詳しくは関電アメニックスの公式サイトで。 (文責・岡村雅之/関西ライター名鑑)