なんと、地殻はマントルの上で「浮いて」いた…地球スケールで考える「アルキメデスの原理」
地形の二分性はなぜあるのか?
地形の二分性は2種類の地殻(大陸地殻と海洋地殻)に対応する、と前節で説明しました。それだけでは「なぜ」の説明としては不十分です。地形の二分性の成因を知るうえで重要な概念をひとつ導入します。 ここで、大陸地殻と海洋地殻を単純化して表した図1を見てください。 大陸地殻の底面は海洋地殻の底面よりもずいぶん深いところにあります。これはなぜでしょうか? その理由を理解するうえでは、「浮力の原理」あるいは「アルキメデスの原理」が重要です。 みなさんご存じのとおり、氷(固体の水)は(液体の)水に浮きます。これは、氷が水よりも軽い(密度が小さい)からです。ふつう、氷の密度は0.917g/cm³、水の密度は1.0g/cm³程度です。これは、同じ重さで比べると、水は氷の約0.917倍の体積をもつということでもあります。 四角い氷が水に浮いている様子を考えてみましょう。氷の底面には浮力(上向きの力)が働きます。この浮力は、氷に押しのけられた水が受けていた重力が上向きに働いたものと考えてください。それは、氷にかかる重力(下向きの力)と釣り合います。氷と水の密度のちがいから、氷の体積の8.3%が水面より上に出ることになります。 アイソスタシーの原理は、浮力の原理を地球内部に適用したものです。つまり、地殻はマントルを押しのけて浮いているようなもの、という見方です。 すでに述べたとおり、地殻は(大陸領域も海洋領域も)その下のマントル(上部マントル)よりも軽い物質で構成されています。また、マントルは固体ですが、長い時間をかけて流動します(時間スケールは大きく異なりますが、液体の水と同じような挙動を示すということです)。地殻はマントルを押しのけた分だけ浮力を受けて、上部が地表に出てきているのです。 ところで、大陸地殻の厚さは場所によって大きく異なるのでした。アイソスタシーにもとづいて、大陸地殻がどのようにマントルに浮いているか考えてみましょう。厚い大陸地殻は当然、薄い大陸地殻よりも重いです。したがって、厚い大陸地殻ほど多くのマントルを押しのけて、より深く沈みます。 押しのけたマントル分の浮力を受けるので、マントルの上に出る部分の厚さも、厚い大陸地殻ほど大きくなります。