なんと、地殻はマントルの上で「浮いて」いた…地球スケールで考える「アルキメデスの原理」
地球の大陸は謎だらけ。 地球表面を構成する岩石は、海洋底と陸で明確に異なる。火星や金星の表面を覆う岩石は、地球の海洋底の岩石と同じ「玄武岩」。地球の陸地を構成する「安山岩」は、火星や金星には存在しない。ほかの惑星には存在しない安山岩に、地球表面の3割が覆われている。 【画像】じつは、海底火山の「断面」は自宅で再現できる…「岩石のプロ」直伝の方法 地球にはなぜ安山岩があるのか? 岩石学者の田村芳彦氏がその謎に挑んだ書籍『大陸の誕生 地球進化の謎を解くマグマ研究最前線』が講談社ブルーバックスから刊行された。刊行を記念して、本書の読みどころを厳選してお届けする。 ※本記事は、『大陸の誕生 地球進化の謎を解くマグマ研究最前線』(ブルーバックス)を抜粋・再編集したものです。
地球の凸と凹
地球の表面にはさまざまな地形(凸凹)があります。地表の凸凹はランダムに存在するわけではなく、ある高さの凸(陸)とある深さの凹(海底)が多く存在しています。これを「地形の二分性」と呼びましょう。 地形の二分性は、地球の重要な特徴です。地球と同じく岩石惑星である火星や金星では、地形の二分性は見られません。 地球の凸と凹の領域はそれぞれ、大陸地殻と海洋地殻の分布に相当します。いずれも、地球のもっとも外側を覆う岩石層「地殻」ですが、構成する岩石の種類や層の厚さが異なります。 大陸地殻を構成するのは安山岩で、海洋地殻は玄武岩からなります。安山岩と玄武岩はいずれもマグマが冷え固まってつくる火成岩ですが、化学組成が異なります。ここで重要なことは、重さ(密度)のちがいです。安山岩の密度は、2.8g/cm³、玄武岩は3.0g/cm³です。 2種類の地殻の違いとしてもうひとつ、厚さにも注目しましょう。大陸地殻の厚さは場所によってばらつきますが30~50km程度、海洋地殻はずっと薄くて5~7kmほどしかありません。 かなり単純化した見方ではありますが、地形の二分性はこのような2種類の地殻を反映したものです。