今こそ日本とイギリスが関係強化すべき3つの理由
3つ目の理由は、両国の「現代の国際社会における類似したポジション」である。どちらもG7国であり、またアメリカとの同盟国である。ストックホルム国際平和研究所によれば、防衛費ではイギリスは世界第6位、日本は10位とミドルパワーとしての防衛力を持つ。 しかし、日本が予定の防衛費を増額すれば3位に浮上するという試算もある(これは、各国の軍事費が現状のままであればという前提での試算なので、現実的ではない)。いずれにせよ、日本とイギリスが共同すれば、インド太平洋の安定性は大きく増す。
実は、両国の防衛面での協働はすでに始まっており、その代表例は、次期戦闘機の共同開発だ。イタリアを加えた3カ国で開発を行い、2035年に初号機を配備するという計画である。日本にとってアメリカ以外との共同開発は初めてのケースとなる。 戦闘機の共同開発のためには、お互いの防衛ニーズや技術情報もシェアすることになり、信頼関係がなければできない。 また2021年9月に、最新鋭のイギリスの空母クイーン・エリザベス号が、初の作戦航海として横須賀のアメリカ軍基地に寄港した。寄港地となるということは、空母の整備や航空機(F35B)の整備なども可能という信頼関係が必須である。
このように、日本とイギリスはすでに両国が最重要視しているインド太平洋地域の安全保障を強化すべく、「ミドルパワー」としての協力を始めている。 ■ミドルパワー間の協力 2023年5月のG7広島サミットでは、「強化された日英のグローバルな戦略的パートナーシップに関する広島アコード」が両首脳により締結された。ここでは、安全保障関連のほか、AI、半導体、クリーン・エネルギーなどでの経済連携についても約束されている。
とくにAIや半導体分野では、日本のソフトバンクが、イギリスの半導体大手アーム社の親会社であることから、連携が加速されると思える。 ここまで、日本がイギリスとの関係を同盟レベルまで強化すべき理由について、「両国とも海洋国家であり、インド太平洋地域を最重視」「日本は、国家体制や民主主義をイギリスから学んでおり相互に信頼感がある」「両国ともG7国かつ経済、防衛においてトップ5圏内で、共同すれば世界平和に貢献可能」の3つのファクターを述べた。
岸田首相の2024年4月のアメリカ議会での演説で、トランプ支持者も含めアメリカ共和党の日本への支持が高まったことは、素晴らしいことだが、もう1つの方策としてイギリスと共同し、アメリカに対して一定の発言力、及び牽制力も持つことも必要であろう。 さらに、中国に対しても、日本とイギリス、およびコモンウェルス諸国が連携すれば、牽制力を高めることができる。 岸田首相は5年間の外務大臣としての経験から、世界の要人とのパイプも太く、西側や途上国からの支持は高い。「トランプ2.0」への対応は、ゴルフクラブをプレゼントすることでなく、日本外交が行動しなければならないことは理解しているだろう。
土井 正己 :クレアブ代表取締役社長、山形大学客員教授