スペースワン、「カイロス」2号機の打ち上げに失敗–高度110kmに到達、第1段エンジンのノズルに異常
スペースワン(東京都港区)は12月18日、小型ロケット「カイロス」2号機を打ち上げたが、衛星の軌道投入に失敗。同日午後に記者会見を開いて状況を説明した。 代表取締役社長の豊田正和氏は、搭載された衛星5機を「軌道に投入させることができなかった。申し訳ない」と発言。衛星を開発した企業や組織には「話をしてご了解をしてもらえた」とし、「早く次の段階に進めたい」と意欲を語った。 豊田氏をトップとする対策本部を立ち上げて「まずは原因の究明に注力」することを明らかにした。次の3号機については、原因を究明してから取りかかることも明らかにした。 「今回については失敗と捉えていない。今回経験したことを次に生かせるデータを集めることができた。一歩一歩着実に進めて、信頼性の高いロケットとして使っていただけるようにしたい」(豊田氏) 記者会見には、経済産業省 製造産業局長 伊吹英明氏がオンラインで出席して、経済産業大臣の武藤容治氏のメッセージを代読した。「完璧な成功には至らなかったのは残念。初号機から9カ月で2号機の打ち上げに至った。誰よりもリスクに立ち向かっているスペースワンの次回の打ち上げに期待している」 カイロス2号機は、2度の延期を経て、和歌山県串本町の「スペースポート紀伊」から午前11時に打ち上げられた。 取締役の遠藤守氏は現段階では「得られたデータを断片的に解析している」段階と説明。打ち上げ80秒(1分20秒)すぎに第1段エンジンのノズルの駆動制御に異常が発生したことで機体の姿勢制御に異常を検知した。打ち上げ141秒(2分21秒)後に第1段が分離、142秒(2分22秒)後に第2段エンジンが着火、158秒(2分38秒後)に搭載されている衛星を覆うフェアリングが分離したことも確認されている。 第1段エンジンノズルの異常から機体は西側にズレ始め、第1段の分離後に第2段エンジンに着火。しかし、第2段エンジンは第1段エンジンによるズレを直せるほどの能力はないために想定していた経路の限界を超えたことで、打ち上げ187秒(3分7秒)に飛行中断措置を取ることになり、第2段エンジンのモーターケースが破断された。 遠藤氏によれば、第1段エンジンのノズルは「燃焼試験や単体試験でも異常はなかった。打ち上げ前の点検でも異常は認められなかった」と説明した。 破壊された機体は紀伊半島から数百キロメートルの地点に落下したことが確認され、被害は報告されていない。機体の高度は、一般的に宇宙の領域とされる高度100kmを越えており、最高到達高度は110.7kmであることが確認されている。 カイロス2号機に搭載された衛星は計5機。Space Cubics、テラスペース、広尾学園(東京都港区、ラグラポが支援)の3者と台湾の宇宙機関である台湾国家宇宙センター(TAiwan Space Agency:TASA)の衛星(もう1機は非公開)。 カイロスは固体燃料の3段式ロケットで、これに加えて軌道投入精度を高めるための液体推進系キックステージ(PBS)を備える。ペイロードは地球低軌道(LEO)へ約250kg、太陽同期軌道(SSO)へ約150kgを投入可能。高さは約18m、全備重量は約23トン。 スペースワンは、キヤノン電子、IHIエアロスペース、清水建設、日本政策投資銀行の共同出資で2018年に設立された。初号機は3月13日に打ち上げられたが、5秒後に爆発。機体自身が異常を検知したことによる自律破壊。自律破壊の原因は、打ち上げ前に固体燃料サンプルを分析した際の予測よりも、第1段エンジンの推力が数パーセントほど不足していたことだった。
田中好伸(編集部)