「ハッピーターン」や「きのこの山」…みんな大好き国民的お菓子が必ずしも目立つ場所に置かれていない理由は?【心理学者が解説】
亀田製菓の「ハッピーターン」や「ソフトサラダ」、森永製菓の「ポテロング」、明治の「きのこの山」……。みんなが大好き"国民的お菓子”ですが、お店のどの棚にあるか意識したことはありますか?意外にも目立たない場所に並べられていることが多いのに気づくはずです。実はそこには「商品のファンにしてしまうブランド戦略」が隠れていました。本記事では、価格以外で有効な「商品プロモーション」について、心理学者の越智啓太氏による著書『買い物の科学:消費者行動と広告をめぐる心理学』(実務教育出版)から一部を抜粋・再編集して解説します。
ロスリーダーとチェリーピッカー
価格は消費者を動かすもっとも重要な要因には違いありません。そのため、スーパーマーケットなどは、たくさんの客を呼ぶために目玉商品を導入することがあります。もちろんこれらの商品は目立つ位置に陳列し、チラシにも大きく載せます。 このような商品のことを「ロスリーダー」といいます。ロスリーダーとして使われやすいのは、価格弾力性が高くて、単価の安い、大量に販売できるもので、スーパーマーケットでは食品がよく使われます。 ロスリーダー商品自体は儲(もう)けを生み出さない(場合によっては損失を生じさせる)のですが、それを目的に来店した客がそれ以外のものも購入してくれるので、客寄せのためによく使われるのです。 多くの研究が「本日の特売品」や「セール品」のようなロスリーダーが店全体の売上や利益を増加させることを示しています。 ただし、ひとつ大きな問題があります。それは、このようなロスリーダーのみを購入し、そのほかの商品を購入しない人々が一定数存在することです。彼らのことを「チェリーピッカー」といいます。おいしいさくらんぼだけを摘(つ)み取っていく人々という意味です。 チェリーピッカーはさまざまな商店の価格の情報を集め、少量の特売品のみを購入します。1円でも安ければ別のスーパーまで移動することも厭(いと)いません。 またファストフードでいえば、マクドナルドで100円マックの商品ひとつだけ買って客席(サービス)を占拠する中高生も、チェリーピッカーといえるでしょう。このタイプの消費者は基本的には利益をもたらしません。 それどころか、このタイプの客が多ければ多いほど、店は儲からなくなってしまいます。