ドッグXの伊東由樹が語る「ペンシルベイト」の今【メガバスのペンシルは盛り上がっている!!】
確立されているから新製品が出にくかった
伊東「一番最初のペンシルベイトっていうと、ザラスプークの前…ザラゴッサあたりなのかな? もうちょっと前に色々あったかと思うんですけど、多分もう百年ぐらい歴史があると思うんですね。その歴史の中で、ペンシルベイトは未だに魚に見切られていないカテゴリーの一つだと思うんです。ルアーとしての性能が確立されてるジャンルですよね。ひょっとして、逆に確立されちゃってるから、進化とか発展の幅が狭かったのかもしれませんね。ザラスプークと昨今のペンシルベイトってあまり変わって見えないですよね。そういえばペンシル系の新製品って、あんまりアメリカでも出ていないような? だから流行が好きな日本のアングラーにとっては、ちょっと飽きられた存在なのかもしれませんね」 ペンシルベイトは死んでいない。 でも、流行とはかけ離れた存在なので、新製品が出にくく、結果的に認知度が落ちてきている。これが一つの結論かもしれない。そんな時代にあっても、メガバスのペンシルベイトは、ロングセラーとなっている。というより「古さ」を感じさせない普遍的な存在になっているのかもしれない。 伊東「初代のドッグ-Ⅹをリリースしたのが91年。リニューアルして、現在のドッグ-Ⅹになったのが、それでも2010年ですからね。ジャイアントドッグ-Ⅹを世に出したのが97年ですから、かれこれ四半世紀経つんですね。実は初代ドッグ-Ⅹは時々限定で生産したりもしているんです。それを含めると、30年以上売ってることになりますね、ドッグ-Ⅹ。うちの若い社員なんか、まだ生まれていない時代ですよね(笑)」 アメリカで人気を博する「ドッグ-Ⅹディアマンテ」も、新しいルアーというイメージがあるが、すでに発売後12年が経過している。そして海外の釣具店では、普通にザラスプークの隣に並んでいる立派な定番ペンシルだ。 伊東「ザラスプークは今も残っていますよね。でも昔はバスロッドがスローテーパーだったから、ザラの本当の凄さがあまり理解されていなかったんですよ。今の高弾性素材で作ったヘビーアクションのロッドで動かすと、ザラはめちゃくちゃ高速ドッグウォークできるんです。浮力がものすごく強い。そして180度オーバーのテーブルターンができる。実はその本質はドッグ-Ⅹと一緒なんです。サーチ能力も高いし、釣果も安定していますよね」 タックルの進化によって、ルアーの新たな能力が開花されることもある。どうやらペンシルベイトは健在らしい。大事なのは、ペンシルベイトの素晴らしさを次世代に伝えることなのだろう。流行ではなく、普遍的な存在として。
伊東由樹
世界に名だたるタックルメーカー「メガバス」を一代で築いた人物。カリスマアングラー、デザイナーにしてCEOを務める稀有な才能の持ち主だ。数多の傑作ロングセラーペンシルを設計してきた。