カナダのカーボンプライシング、所得格差の解消にも
記事のポイント①カナダはカーボンプライシング(CP)を軸に脱炭素化を推進する②同国の炭素税は1トンあたり約8500円、税収の9割を市民などに分配へ③低所得者には炭素税で払った額よりも多く還元される場合もある
カナダはカーボンプライシング(炭素の価格付け、以下CP)を軸に脱炭素化を推進する。トルドー首相が2016年にCPを打ち出すと、同国全土で同レベルの価格付けを目指し、制度を強化してきた。CPで得た収入は、一律で市民に還元しており、所得格差の解消にも一役買っている。(オルタナ副編集長=池田 真隆)
カナダ大使館は12月11日、CPに関するセミナーを開いた。CPは、炭素に価格を付け、企業の温室効果ガス排出量を抑える政策だ。企業間で削減した排出量を売買する「排出量取引」と排出量に応じて課金する「炭素税」などがある。 CPを導入したのは、スウェーデンや英国、フランスなど73カ国・地域に及ぶ。日本はGX政策の一環として、2026年から排出量取引を本格化する。2028年には、石油の元売りなどに炭素の賦課金を導入し、2033年から発電事業者向けに排出枠の有償オークションを行う。 日本は炭素税を導入しないので、地球温暖化対策税がそれに該当する。その価格は、CO2排出1トン当たりわずか289円だ。EUの1万2000円~1万5000円に比べると大きな差だ。 日本政府は、脱炭素化と経済成長の両立を目指した、「成長志向型のCP」を掲げるが、脱炭素化技術を確立できていない産業もある中で、炭素価格を高めることは経済成長につながらないと考える。そのため、企業にとって予見可能性を高めるシグナルとなる炭素価格を示すことに二の足を踏む。 一方、産業界からは実効性のあるCP制度を求める声が高まる。脱炭素化を目指す企業グループ「日本気候リーダーズ・パートナーシップ(JCLP)」は、日本政府に次の5つの点を踏まえてCP制度の設計を求めた。 それは、「1.5℃目標に整合した排出削減目標の明確化」「削減目標の実現に向けた炭素価格や排出量上限(キャップ)の明確化」「1.5℃目標に合ったスピード感での導入」「CPで得た収入を省エネ・再エネなどの既存技術に活用すること」「商品・サービスの炭素価格を可視化し、排出量に応じて転嫁すること」――だ。 (この続きは) ■カナダの炭素税は1トン約8500円、30年には1万8000円へ ■低所得者には炭素税で払った額よりも多く還元される場合も ■2019年以降、家計の負担には「ほとんどつながっていない」