前輪が折りたためるびっくりメカ採用! 航空機メーカーが作ったひとつ目マイクロカーが面白すぎる
特殊なパーツに特殊な機構とエンタメの塊!
エンジンは、後席の背後にフランスの原動機メーカー「イドラル」製の175cc単気筒2ストロークを載せ、8馬力を発揮したとされています。なお、スターターはアメリカのウエスティングハウス製ジャイロスターターという特殊なものが選ばれています。 スターターを操作するには、ドライバーが床のレバーを引き、エンジンのフライホイールを回転させる電気モーターを始動させます。次いで、クラッチがフライホイールをエンジンに噛み合わせ、回転するフライホイールの慣性を利用してエンジンがまわり始めるという仕組み。ややこしそうですが、レストアラーにとっても「悪夢かのような代物」で、現存するサンプルもたいていスターターの調子は良くないようです。 さて、上述の前輪に採用された折りたたみ機構ですが、これはフランス、とくにパリ市内の壊滅的な駐車環境に即したもの。これを使えば、全幅1350mmから一気に920mm程度に縮んでくれるというビックリドッキリメカ。ですが、走行上なんらかの問題があったらしく、総生産台数300台のうち最初の数台に組み込まれたのみでキャンセルとなりました。 また、ボディタイプもトーピード(魚雷)とよばれるベルリーナとキャノピーを省いたカブリオレといったバリエーションが発表されたものの、市販車はほとんどがベルリーナだったとのこと。もっとも、ディストリビューターとなったA.E.M.W.(Ateliers Electro-Mechaniques de la Seine of Saint-Ouen)ではカスタムオーダーを受付けていて、カラーや内装、あるいはキャノピーの有無など、生産されたモデルはいずれも同一のものはなかったとされています。 総生産台数のおおよそ1割が現存するそうですが、そうしたサンプルを見ればどれも微妙に異なることがわかるはず。さすが、フランス人は庶民のアシにもこだわるものです。ちなみに、オークションでは現存数の少なさや独特のスタイルなどから8万ドル(約1200万円)で落札されたサンプルもありました。 やっぱり、マイクロカーといえども良品はそれなりの高値になるということ。なるほど、奥が深い世界ではありますね!
石橋 寛
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