桜島フェリー就航90年 かつての“ドル箱”9年連続赤字の危機も…「これからもフェリーのある景色を」
(新徳産業 新徳國公会長)「ありがたいと思う、それしかない。味を落とさないこと、売れるからといって、いい加減なことは絶対したらいけない」 当時200円だったかけうどんは、現在500円。就航当時は10銭から15銭だったフェリーの運賃は、現在250円。この夏、5年ぶりに値上げされました。 背景にあるのは厳しい経営状況です。 桜島フェリーは、ピーク時の1997年度には収益がおよそ1億4600万円と事業開始以降、おおむね黒字経営が続いていました。しかし、2015年度以降は2億円から7億円以上の赤字が続いています。 東九州自動車道と大隅縦貫道が鹿屋まで開通したことや、新型コロナによる利用客の減少が主な要因です。 (桜島フェリー元船長 谷口和矢さん)「負けないのは接岸。昔は卵・豆腐が割れないような着け方をしなさいと、自分たちの先輩たちの習いだった。(Q.割れたことはない?)あるよ(笑)」 旧西桜島村出身の谷口和矢さん、70歳です。5年前まで40年間、船長を務めてきました。特に印象に残っているのが、夏の採用試験の時期と台風接近が重なった日の運航です。 (桜島フェリー元船長 谷口和矢さん)「あと1時間で台風の暴風域。県庁職員の採用試験、教職員の採用試験の人たちがいっぱいいる。運航させてくれと、運航したことがある」 幼いころから桜島フェリーが身近にあったという谷口さん。元船長として、住民として、錦江湾をフェリーが渡る景色を見続けたいと願っています。 (桜島フェリー元船長 谷口和矢さん)「桜島とフェリーは、なくてはならないもの。私の人生の宝物」 桜島の人口は現在3200人あまりで、10年前から3割ほど減り、今後も利用者の減少が見込まれますが、フェリーは活火山とともに暮らす住民になくてはならない交通手段です。 (鹿児島市船舶局総務課 今吉洸貴主事)「物流を支えることはもちろん、島内や垂水方面の方の緊急搬送や命に係わることを担っている大切な交通網なので、これからも下支えしていきたい」
生活スタイルや仕事の多様化、交通インフラの発達など、地域をとりまく環境が大きく変化した90年。時代の波に揺られながら桜島フェリーは進み続けます。
南日本放送