「Software Defined X」とは? JEITA会長会見から読み解く新時代のキーワード
「“Software Defined X”の時代がこれから到来する」 電子情報技術産業協会(以下、JEITA)会長の津賀一宏氏(パナソニックホールディングス会長)は、JEITAが2024年12月19日に開いた記者会見でこう語った。 【画像】自動車のSDV化の概要【画像全5枚】 まず、「Software Defined X」とは何か。津賀氏の発言をかみ砕くと、「さまざまな分野でソフトウェアの開発力が問われる」ことを指す。つまりDX(デジタルトランスフォーメーション)を意味する言葉であり、2025年の新たなキーワードにもなり得るこの言葉に今回は注目したい。
自動車業界は“100年に一度の大改革”「Software Defined X」時代とは何か?
JEITAは毎年末に会長会見を開催し、業界動向として「電子情報産業の世界生産見通し」を発表(注1)するとともに同協会の活動状況を説明している。今回はそれらに加え、技術動向のキーワードとして「Software Defined X」を挙げた。その中でも自動車分野における「Software Defined Vehicle」(以下、SDV)に関する動向調査を発表した(注2)。同調査の概要を以下で紹介する。 調査レポートではまず、自動車のSDV化について「自動車はこれまで、エンジンなどハードウェアの性能が競争の源泉だった。近年では自動車の電装化によってハンドル操作やブレーキなどの基本性能をソフトウェアが制御するようになり、今後はソフトウェアの性能が競争力を左右する。通信技術の高度化により、搭載ソフトウェアがインターネット経由でアップデートされるようになり、走行性能や安全機能が向上する。電装機器構造が一層進化し、搭載される半導体や電子部品が高性能化するのに伴い、自動車のSDV化が進むと見込まれる」と説明した(図1)。 SDV化の進捗(しんちょく)のスピードについてはどう見ているのか。調査レポートでは新車生産台数に占めるSDV比率について、2035年における世界の新車生産台数は9790万台、そのうちSDVは6530万台、SDV比率は66.7%になるとの見通しだ。また、日本の新車生産台数は690万台、そのうちSDVは430万台、SDV比率は62.0%になるとの見通しだ。新型コロナウイルス感染拡大の影響で減速した世界の新車生産台数は、回復基調にあるが、2030年をピークに一段落することが予想される。SDVは2030年以降に普及が進み、市場は急速に拡大するとの見方を示している(図2)。 つまり、世界だけでなく日本でも新車生産台数に占めるSDV比率が10年後に6割を超える見通しだ。日本政府もSDVをはじめとする自動車分野のDXにおける国際競争を勝ち抜くため、2024年5月に「モビリティDX戦略」を策定した。EV(電気自動車)化などと合わせて自動車は今後10年で大きく変わりそうだ。自動車業界で言われる「100年に一度の大変革」が、これから10年でドラスチックに起きそうだ。 一方、調査レポートでは、SDVの普及に向けた課題としてセキュリティ対策とソフトウェア開発効率を取り上げている(図3)。 図3の内容はSDVを対象としているが、その多くは自動車以外の分野にも当てはまりそうだ。 (注1)JEITA、電子情報産業の世界生産見通しを発表(JEITA) (注2)SDV の進展に伴う車載半導体・電子部品市場の需要額見通しを発表