考察『光る君へ』赤染衛門(凰稀かなめ)の閨房教育、定子(高畑充希)まひろ(吉高由里子)出産、宣孝(佐々木蔵之介)「誰の子であろうとわしの子だ」仰天27話
大河ドラマ『光る君へ』 (NHK/日曜夜8:00~)。舞台は平安時代、主人公は『源氏物語」の作者・紫式部。1000年前を生きた女性の手によって光る君=光源氏の物語はどう紡がれていったのか。27話「宿縁の命」では、まひろ(のちの紫式部/吉高由里子)と道長(柄本佑)の思いがけない再会、中宮・定子(高畑充希)の出産、そして、まひろにも!と、主要登場人物たちに大きな転機が訪れました。ドラマを愛するつぶやき人・ぬえさんと、絵師・南天さんが各話を毎週考察する大好評連載28回(特別編1回を含む)です。
抱き合わずにはいられない
石山寺でひとり祈るまひろ(吉高由里子)の前に、キラキラとした何かと共に現れた道長(柄本佑)は幻ではなく、現実の彼だった。娘・彰子(見上愛)の入内を前にして、御仏に祈りを捧げに来たものか。道長が住んでいる都の土御門殿から石山寺まで、距離にして約20㎞。道が整備された現在では徒歩ならば4時間半ほどで到着する。多忙な左大臣殿でもお忍びで行き来できるお寺、それが石山寺。 ふたりが話しながら降りてくる石段、その背景は過去に参拝したことがある者として「石山寺だ! 覚えてる、あの辺りだ!」と大興奮できる場面だ。 若干ぎこちない近況報告を介して、徐々にかつてのふたりに戻ってゆく。 道長「(越前で)海を見たか」まひろ「はい、見ました」 海の見える遠くの国。ふたりの心にいつも、直秀(毎熊克哉)がいることがわかる。そして、越前で手にした越前和紙を思い出しながらのまひろの台詞。 「私もいつか、あんなに美しい紙に歌や物語を書いてみたいです」 ハイ、ここテストに出まーす覚えててくださーいという台詞だった。まひろの文を大切に取っておき、字をしっかりと覚え、彼女の言葉は心に留めておく道長だ。こんな一言も、きっと決して忘れない。 そして再会したら抱き合わずにはいられない。スローモーションからの熱い抱擁! (ここでふたりを包む音楽がとてもよい) 16話でさわ(野村麻純)の寝ているところに忍び込んできた道綱(上地雄介)といい、どいつもこいつもお寺さんで罰当たりな……! とは思ったが、よく見るとまひろと道長が横たわっている部屋はいくつもの几帳だけでなく、隅に寄せられた複数の燭台、唐櫃(からびつ)などが見える。参籠所(さんろうじょ/神仏に祈り籠る場所)ではなく物置ではないか。清くあるべきところとは別の場所ならギリギリセーフだろうか。セーフでありますように。 紫式部と藤原道長が幼い頃から縁があるという設定がフィクションであり、さらにそのふたりが若き頃に密かな恋人であったというのもフィクション、そしてここでまた巡り合ったその結果も……フィクションのミルフィーユである。そのミルフィーユを美味しいと感じるか、口に合わないか。それはもう好みというものだ。 そもそも、第1話で藤原道兼(玉置玲央)が紫式部の母(国仲涼子)を斬殺するというのも、放送前は全く予想しなかった創作なのだ。ひとつひとつ腰を抜かしていたら、年末までこっちの身が持たない。 『光る君へ』が大変面白い大河であることには間違いないので、私はこのまま味わうつもりである。