『室井慎次』2部作が存在した意義 青島が主人公の『踊る大捜査線 N.E.W.』に期待するもの
『踊る』の中核を為すテーマが室井でも青島でもない誰かに受け渡されることの必要性
もちろんそこには、前向きになり得る部分がまったくないわけでもない。例えば劇場版第2作の後に亡くなったいかりや長介が演じていた和久が、故人として語られるようになった劇場版第3作以降、新たに甥の和久伸次郎(伊藤淳史)が主要キャラクターとして加わることで、和久の信念を継承する役割を果たしていた。 『室井慎次』後編で、かつて室井が青島と交わした約束は新城(筧利夫)に託され、さらに里子のひとりであるタカ(齋藤潤)は警察官になることを志す。室井の遺志が文字通り“生き続ける”こと、すなわちこの『踊る』の中核を為すテーマが室井でも青島でもない誰かに受け渡されることは、シリーズの世界が広がる上で欠かせないことである。 前編での室井と新城の会話のなかで、青島は警視庁の捜査支援分析センターにいると語られていた。また後編では、恩田すみれ(深津絵里)がすでに警察官を辞めて、撃たれた時の後遺症にいまも苦しんでいることが明かされていた。青島のカムバックは確定しているが、他のキャストについてはまだ定かではない『N.E.W.』。キャラクターも重要ではあるが、なによりも『踊る』である以上、お台場に帰ってきてもらわなくては話にならないだろう(後編で少しだけ出てきたお台場では物足りない)。となれば、“湾岸署署長”となる青島の姿を期待したくなるのだが、そのあたりは公式の発表を楽しみに待つことにしよう。
久保田和馬