近鉄16000系、南大阪線・吉野線「最古参特急」の今 渋い外観、「吉野特急」の元祖として観光と通勤両面で活躍
第1~第3編成は大井川鉄道(静岡県)に譲渡された。現在は第3編成のみが近鉄特急の長年の伝統だったオレンジと紺のカラーリングのまま、南海電気鉄道の高野線からやってきた21000系「ズームカー」とともに普通電車として走っている。 近鉄の特急車両は2015年末以降を「クリスタルホワイト」と呼ぶ白をベースとした新塗装に変更。16000系も2016年以降順次塗り替えられ、イメージを一新した。 ■営業用車両は残りわずか
そして第4編成以降も徐々に姿を消している。第4~第6編成はすでに廃車になった。2024年11月初旬の時点で、第7編成は定期営業運転を外れた「運用予備」、4両の第8編成は「休車」の扱いになっている。近鉄は2024年10月、11月下旬に第7編成の大阪阿部野橋―吉野間の乗車体験などを盛り込んだツアーを実施すると発表。同編成の完全引退も近いとみられる。 一方、第9編成と16010系は現役で活躍中。技術管理部の奥山元紀さんは「16000系は地味な存在だが、近鉄特急のネットワーク構築に貢献した。吉野にお出かけの際は、行きは青の交響曲、帰りはレトロな雰囲気の16000系といった具合に乗り比べて楽しんでもらいたい」と話す。
大阪阿部野橋―吉野間64.9kmをすべて乗り通しても運賃に追加する特急料金は520円。都会の高架区間から、のどかな田園地帯、そして山の中へと景色が変遷していく。昭和生まれの近鉄特急の旅を体感するにも絶好の路線といえそうだ。
橋村 季真 :東洋経済 記者