食品工場の用地取得が活発化 23年面積は7.5%増の193haに
食料関連の工場用地の取得が活発だ。経済産業省の工場立地動向調査によると、23年に食料関連業種(食料品および飲料・たばこ・飼料製造業)が新たに取得した工場立地は、件数ベースで前年比16.4%減(122件)と後退したものの、敷地面積ベースでは7.5%増加(193ha)した。件数・敷地面積ともに他の製造業種を大幅に上回る水準であり、22年以降の地価高騰の中でも旺盛な設備投資意欲を保っていることが読み取れる。
他産業上回る投資意欲を持続
23年の取得立地面積を主要業種別に見ていくと、食料関連の193haに対し、化学55ha(前年比44.2%減)、プラスチック製品52ha(同41.2%減)、鉄鋼25ha(同49.0%減)、金属製品140ha(同13.8%増)、汎用機械21ha(同38.9%減)、生産用機械119ha(同24.8%減)、電子・デバイス167ha(同502.2%増)、電気機械64ha(同17.9%増)、輸送用機械58ha(24.4%減)となっている。政府助成を追い風に半導体工場の新増設に沸く電子・デバイスが急増しているが、食料関連には及ばない状況だ。 取得立地の1平方m当たりの平均地価は食料品で4万1392円、飲料・たばこ・飼料で2万1925円と、いずれもコロナ前の19年との比較で2.5倍強に上昇。地価高騰で新規取得に踏み出しにくい環境だが、従業員数300人以下の中小企業を中心に活発な取得が続いた。 有効回答に占める中小企業の立地取得割合は、件数ベースで76.0%、敷地面積ベースで59.8%を占めており、中小が工場の新増設をけん引しているのは明白だ。取得立地件数を都道府県別に見ていくと、北海道12件、茨城県8件、栃木県6件、群馬県5件、神奈川県5件、静岡県9件、鹿児島県6件と、引き続き関東圏での取得が目立つ。 食料関連の工場立地取得面積は88年の489haをピークに90年代前半に急縮したが、その後は100ha台後半から200ha台で安定的に推移。製造業全般で空洞化が進む中、90年代後半以降は全製造業種の中で最も立地取得ニーズの大きい業種となっている。 総人口の減少で国内食品市場は縮む方向にあるが、輸出・インバウンド需要の増加や労働人口の減少に伴う生産性向上ニーズの拡大を背景に、今後も食料関連工場の新増設・統廃合が活発に行われる可能性は高い。国内設備投資のけん引役として食料品製造業の存在感は今まで以上に高まりそうだ。
日本食糧新聞社