ジャガー・ルクルト レベルソに3つの新バージョン──高級スポーツウォッチの原点は、ひっくり返せる腕時計
スポーツウォッチの歴史に名を残すアイコン時計の復活に間に合わせるべく、ジャガー・ルクルトは伝説的なレベルソに3つの新バージョンを登場させた。 【写真を見る】レベルソ・トリビュート コレクションのディテールを拡大チェック!
レベルソの永遠性と汎用性を強調する新モデル
1930年、インドでポロの試合を観戦していたスイスの実業家セザール・ド・トレーは、選手たちが試合中に時計を壊していることに気づいた。伝えられるところによると、彼はスイスに戻ると、時計職人のジャック=ダヴィド・ルクルトに、ポロ競技の過酷な状況にも耐える頑丈な時計の製造を依頼したという。これが、時計ケースを回転させてもっともデリケートな風防を保護するという斬新なアイデアとなり、1931年に最初のレベルソが作られるきっかけとなった。
やがてカルト的な人気を博するようになったものの、ジャガー・ルクルトのレベルソは、その実績に見合うほどの熱狂的なコレクターを獲得することはなかった。しかし、今年発売された3つの新しいレベルソは、これまで注目されてこなかったレベルソというアイコンに、新たな注目をもたらした。 私を含め、多くの人にとって、ジャガー・ルクルトのレベルソはすでに永遠の人気モデルだ。レベルソとは元祖ラグジュアリー・スポーツウォッチであり、レースやダイビング用に設計された大型のスポーツウォッチは、それに比べると平凡に見える。 レベルソという名前は言うまでもなく、反転式ケースに由来しており、オリジナルモデルは片面が文字盤、もう片面が鎧のようなケースになっていた。こういった構造になった理由は、マレットやボールに打ち付けられることになる時計を守るため、ポロの選手たちがプレイ中に時計を甲羅のように守っていたことに起因する。 素晴らしい歴史や機能性、そしてエレガントなケースにもかかわらず、レベルソは殿堂入りした他の傑作時計たちと同列に語られることはなかった。事実、一般的にこの時計への関心が低かったこともあって、ジャガー・ルクルトは1940 年代後半から70年代半ばにかけて、レベルソの製造を中止していたほどだ。 ワシントンD.C.近郊を拠点とする時計ディーラーで、コレクターとしても知られるケビン・オブデルは、長年この時計のファンである。そんな彼は、数年前までは、レベルソは販売する価値さえなかったと回想している。 しかし彼は、時計のコレクターたちがその価値に気づいてくれることを期待して、長年所有し続けた。そして今や、ヴィンテージのレベルソをものの数分で売却するようになった。「象徴的な時計というものは、流行に左右されないものです」と彼は語る。 そしてジャガー・ルクルトは、そのカタログの目立った穴、歴史の空白を埋めるかのようなタイムピースを発表した。新作の「レベルソ・トリビュート・モノフェイス」は、約1 世紀前に作られたオリジナルの現代版という位置付けだ。 1931年にリリースしたオリジナルモデルのデザイン・造形を再現した新作は、2024年に生きるコレクターのあらゆるニーズを満たすものだ。現在の流行に合った小型化されたケース、耐久性に優れた装飾のない裏蓋、そして約100年の歴史を持ち合わせている。 ところで、ジャガー・ルクルトは、長い歴史を通じて、反転するレベルソのケースに、ポロの試合中に時計を守るという以上の用途を見出してきた。今日では、精巧なエナメル画やダイヤモンドでデザインされたバージョンをラインナップしているし、ジェイ・Z は、裏側にカーネギーホールの絵が刻まれたピンクゴールドのモデルを所有している。 ブランドの技術力を示す現代的なモデルもある。たとえば、2021年の「レベルソ・ハイブリス・メカニカ・キャリバー185」。これはひとつのレベルソに4つの異なる文字盤と1ダース近くの複雑機構を搭載したモデルだ。 しかし、レベルソの醍醐味とは、ひとつの時計をふたつの時計として使えるという点にある。事実、コレクションに加わった2つの新作は、いずれも両面で時間を確認できる「デュオフェイス」スタイルを持っているのだ。 そのひとつは、回転するトゥールビヨンを、表側の超モダンなスケルトン文字盤、あるいは裏蓋側のクラシックなグレー文字盤から見えるようにしたもの。もう一方は、インクのようなネイビーブルーとシルバーの文字盤を持つものだ。 この2つのモデルは、オリジナルのようにポロ競技には適していないかもしれないが、非常にクールで楽しい機能を載せた時計だ。 リバーシブルの時計は他にもあるが、紡ぐ価値のある糸が付属しているのはレベルソだけ。レベルソとは、長く語るに値する時計、なのである。 WORDS BY CAM WOLF TRANSLATION BY MASAYUKI HIROTA Photo illustration: Kelsey Niziolek. Jaeger-LeCoultre Reverso (2): Courtesy of the brand. Mirror: Getty Images.