パナ子会社不正は93件・対象製品5200種類に…55工場中40工場で確認、「不正ない」アンケートに虚偽回答も
パナソニックホールディングス(HD)の電子部品子会社のパナソニックインダストリーは1日、電子部品向け材料で米国の製品安全認証を不正取得していた問題で、有識者による調査委員会の調査結果を発表した。不正行為は全体では93件を数え、対象製品は計5200種類に上った。報告書では「売り上げと利益を品質に優先したとのそしりを免れない」などと厳しく指摘した。(杉山正樹、坂下結子) 【図表】会見の主な内容
問題を受け、インダストリー社の坂本真治社長とパナソニックHDの楠見雄規社長が、いずれも月額報酬の50%を4か月分、自主返上することも発表した。
電子部品向けの材料は、電子回路や半導体を衝撃や湿気から守る樹脂などで、自動車や家電に幅広く使用されている。米国の製品安全認証制度「UL規格」の不正取得をきっかけに、インダストリー社内の全件調査を行ったところ、UL規格の不正は、新たに9件が判明し、計21件となった。UL規格以外でも、検査成績書の改ざんや規格未達品の出荷など72件の不正が発覚した。
不正対象の製品は約4000社に出荷したが、事故の報告はなく安全性に問題はないとしている。対象製品の年間ベースの売上高は1900億円規模だが、補償を求める相談が一部にとどまっていることから、業績への影響は軽微とみている。
不正は遅くとも1980年代から行われ、国内外の55工場のうち、40工場で確認された。現場では、管理職を含め、従業員の間で広く不正の存在が共有されていた。本社による品質の法令順守に関するアンケート調査に、不正はないと虚偽の回答をした現場もあった。
2022年に坂本社長ら経営層にも、一部の不正が報告されていたが、認証機関や顧客へは伝えていなかった。
報告書では、一連の不正の原因について、「『安全性や性能に問題はない』として不正を正当化していた」と指摘し、「品質保証の本質を見誤ったと言わざるを得ない」と指弾した。
再発防止策については、「品質保証への理解不足は根深く、経営陣が不正の撲滅に向けて強い決意を示す必要がある」と強調した。インダストリー社では、人が介在する余地を減らすための試験装置の自動化など、不正防止対策に3年で約50億円を投資する。
この日、大阪市内で記者会見した坂本社長は「心配、迷惑をかけ、深くおわび申し上げる。最大の要因は経営層の甘さと、現場の理解不足だ」と述べた。