自転車BMXレーシングパリ五輪「金」榊原爽さんの母・由紀さん②…「最悪の事態覚悟した」兄のリハビリ励む姿、妹を変えた
昏睡(こんすい)状態から覚めたのは6週間後。体重は20キロ以上落ち、鍛え上げてきた身体は見る影もなかった。 3月末にコロナ禍で東京五輪の延期が決まると、爽さんは競技と向き合う気持ちを見失いかけた。 「それでも、懸命にリハビリに取り組む魁の姿に、延期ぐらいでへこたれている場合じゃないと思ったようです」 5月には、爽さんがカメラを構える前で自力で立ち上がり、爽さんの練習に車イスで同行してアドバイスをくれるようにもなった。 待ち望んだ瞬間がやってきたのは1年3か月後。自転車にまたがった魁さんは、右半身の自由がきかないにもかかわらず、爽さんと一緒に高低差のあるBMXのコースをゆっくりと走り切ったのだ。 「その頑張りと勇気に胸が熱くなりました。爽の競技に取り組む姿勢も、明らかによりストイックに変わっていきました」
東京五輪代表に内定
東京五輪の代表内定通知が爽さんに届いたのは、その1か月後のことだった。