夢は「日本一のレコード屋」!愛すべき偏愛とシュールな笑いが詰まった『レコード大好き小学生カケル』【書評】
「僕の夢は日本一のレコード屋さんを開くことです!」。音楽を聴く手段がサブスクやYouTube全盛の現代に、あえてレコードというアナログな音楽媒体を愛し、「日本一のレコード屋」という夢を追いかける小学生がいた。そんな少年のあふれんばかりのレコード愛と、周囲とのほほえましくもシュールなやりとりを描いた作品が『レコード大好き小学生カケル』(おおひなたごう/KADOKAWA)だ。 【漫画】本編を読む
主人公はレコードが大好きな小学生カケル。学校でレコードの魅力を広めようと奮闘し、レコード部の創設を目指す。周囲の小学生たちは、レコードを見たことも聞いたこともない世代だ。しかし部活を作るには顧問が必要だし、部員も集めなければならない。そんな数々のハードルをレコードに対する大きな愛でのりこえていくのだった。 レコードの溝を眺めることを楽しみ、音量ゼロのプレイヤーから微かに伝わる音の振動さえも愛おしく感じる。アナログ機器ならではの魅力とそこへの偏愛っぷりを描いている。 初めてレコードを聴いた感想を「ゆで卵カッターで全身をスライスされたみたい」「フードプロセッサーであらびきにされた感じ」とユニークなたとえで表現する。「酒飲んでないときのお父さん好き!」「お父さんも、万引きしていないときのカケルが大好きさ!」といったシュールな笑いとひねくれたやりとりもクセになる。 各話の間には、作中に出てきたレコードに関するコラムも収録。効率的なレコードの探し方やレコードの扱い方、「レコードは投げてはいけない」なんて超初心者向け(!?)の情報も満載だ。 「レコードが好き」「最近ちょっと気になっている」という人はもちろん、ユニークな偏愛とシュールな笑いを求める読者にもおすすめの一冊だ。この作品を読めば、レコードの魅力に触れられ、あなたもカケルのように「ホットサンドメーカーでぺったんこ」にされるような衝撃をきっと味わえるだろう。 文=ネゴト / たけのこ