「警察庁潜入は簡単だった」 国松警察庁長官狙撃事件を自白した秘密工作員の語った犯行の驚くべき一部始終
銃を海に捨てた
《その後、拳銃のコルト・パイソンとホローポイント系の357マグナム・ナイクラッド弾の残弾、ならびに撃ち殻薬莢(やっきょう)は、4月13日、竹芝桟橋から伊豆大島に向かう東海汽船「さるびあ丸」の船上から海中に投棄しました。他の乗客が寝静まるのを待って、夜遅く甲板から、紙袋に入れたそれらの銃器、弾薬類を海に捨てたのです。なお、その船には、北新宿を住所地とする「太田政之」という偽名で乗船しました。 こうして、私たちは完全な証拠隠滅を図り、自分たちと本件が結びつかないようにしたのです。 5月16日、私にとって懸案事項であった、オウム真理教の教祖・麻原彰晃の逮捕が、警視庁によってようやく実行されたのを見届け、これで自分の狙い通り、教団は壊滅するものと確信しました。その翌日、貸金庫に赴いて、保管していた天野守男名義の偽名パスポートを取り出しました。そして数日後、仕事をやり遂げたというすがすがしい思いを抱きながら、久方ぶりに空路、アメリカへと向かったのです》 *** ここまでの詳細な供述を得ながらも、結局、捜査当局は中村を逮捕することはできなかった。犯人しか知りえない「秘密の暴露」があったにもかかわらず……その背景にあった警察内部の暗闘ともいうべき事情についても鹿島氏は『警察庁長官を撃った男』で詳説している。
デイリー新潮編集部
新潮社