建築探偵・藤森照信さんが全国の名茶室訪問 茶室を知ることで見えてくる茶道の極意
AERAで連載中の「この人のこの本」では、いま読んでおくべき一冊を取り上げ、そこに込めた思いや舞台裏を著者にインタビュー。 【写真】建築探偵・藤森照信さんが全国の名茶室訪問する『ニッポン茶室ジャーニー』はこちら 「建築探偵」として知られ、異色の茶室建築家でもある藤森照信さんが「行ってみたかった」全国の名茶室を、はなさんと訪問する。茶室の成り立ちや特徴、時代背景、作り手の嗜好などについて、豊富な知識でわかりやすく解説。殿様や有力者、茶人らの美意識や哲学がどのように茶室に影響を与えたのか。彼らの自由な発想の面白さを伝えてくれる。藤森さんが手掛けた「フリースタイル茶室」も収録された『ニッポン茶室ジャーニー』。著者の藤森照信さんに同書にかける思いを聞いた。 * * * 本著は、建築探偵・藤森照信さん(78)が共著者のはなさんと一緒に、全国に遺された17の茶室を訪問した記録だ。最後の訪問先として、藤森さんが設計した四つの「フリースタイル茶室」も登場する。 藤森さんは山口晃さんをはじめ、さまざまな人と建築をめぐる本を出してきた。本書では、茶室研究の著書を持つ藤森さんとはなさんとのかけあいが、茶道を知らない読者との距離を縮めてくれる。 「建築を見て回るのは自分とは違う性格の人がいいですね。はなさんもきちんとお茶の稽古をしていらっしゃるけれど、茶室の専門家ではない。よい感じで合いの手をいれてくれました」 二人が訪ねたのは織田有楽斎の「如庵(じょあん)」や秀吉の「時雨亭・傘(からかさ)亭」など、個性豊かな茶室の数々だ。 「お茶を喫(の)むだけのビルディングタイプ(建築様式)は、世界の建築史を見渡しても日本のほかにはありません。ヨーロッパは一番良い部屋で喫みますが、専用の場所ではない。中国だと書斎か庭を見渡せる宮殿の亭(あずまや)を使いますね。一方、日本の茶室は風景を楽しむようにはできていない。今から450年前に千利休が現れて、独創的な茶の喫みかたと専用の建築様式としての茶室を創ったからです」