Mrs. GREEN APPLE、米津玄師、藤井 風、THE BACK HORN……毎日を頑張る人々への応援歌
朝起きて身支度をし、電車に揺られて会社や学校へ向かい、それぞれの役目を果たして家に帰ると、数時間後にはまた同じ一日が巡ってくる。もちろん楽しい日もあれば、嫌気がさすようなときもあったり、不満はないけれど何か物足りなさを感じたりすることもあるだろう。そんなときに、人々を鼓舞する応援歌は、気持ちを少し上向きにさせてくれるはずだ。本稿では、毎日頑張る人たちへ向けた楽曲を取り上げてみたい。 【写真】まるで夢の世界!幻想的な空間で歌うMrs. GREEN APPLE 大森元貴 直近でいえば、Mrs. GREEN APPLEが11月29日にリリースした新曲「ビターバカンス」が挙げられるだろう。〈気にしないように「したり」/守るために「戦う」毎日〉〈嫌われたくないし/なんなら皆んなに好かれたいし〉と、日々過ごすなかで湧き起こる複雑な感情を描きながら、サビで〈辛いことばっかじゃないって事を/君に教えたい 教えたい 教えたい〉と高らかに歌い上げるのが印象的だ。明るく陽気なサウンドとあわせて、色んなものを抱え込みすぎて訳がわからなくなってしまったときに、もう少し軽く考えていいのだと伝えてくれているように思う。 米津玄師の「毎日」は、思い通りにはいかない現実を生々しく突きつけてくる。電車の通過音と低いピアノの音色から〈毎日毎日毎日毎日 僕は僕なりに頑張ってきたのに〉と始まる、絶望感の伝わってくる幕開けだ。〈わかってんだクソボケナス これが僕の毎日〉と鬱憤を吐き出すかのようなボーカルが続き、ラストで彼は〈頑張ったとしても変わらないものを この日々を/まだ愛せるだろうか〉と呟くが、これは同時に聴き手への問いかけでもあるだろう。一方で、メロディは踊りだしたくなるぐらいキャッチー。このポップな曲調に、何もかも上手くいくわけではないけれど希望はあると教えられているようにも感じる。
藤井 風、THE BACK HORN……それぞれの個性が光る応援歌
藤井 風の「Workin' Hard」は“頑張っている”という楽曲名の通り、懸命に生きる私たちに寄り添い、肯定してくれる歌だ。重たく鳴り響くピアノからは日々の大変さも滲み出ているようだが、そんななかで彼は〈みんなほんまよーやるわ めっちゃがんばっとるわ〉〈You've been workin' hard/Workin' hard〉(あなたマジで頑張ってる/頑張ってる)と、もう十分頑張っているのだとひたすらに繰り返す。そして、〈結果なんぞかったりーわ〉〈Trust the process and be brave〉(プロセスを信じて勇敢であろう)と、結果ではなく頑張っていること自体が素晴らしいと歌うのだ。決して熱く鼓舞しているわけではないが、どんな自分でも認めてくれるような語り口に救われた人も少なくないだろう。 THE BACK HORNの「ジャンクワーカー」は、〈上司の洗脳は解けずこのご時世でも命令口調〉〈プライベートも仕事に尽くし家族との時間さえ作れずに〉と、働くうえでありがちな不満を並べたお経ラップが秀逸。疑問を抱えながらも、結局は現状維持を貫いてしまう、労働者のリアルな心情を代弁しているようだ。気持ちを押し殺しているかのように淡々と繰り広げられるAメロ、Bメロから一転、攻撃的なバンドサウンドとともに〈ぶっ壊れてんのはお互い様だね〉と叫ぶサビとの対比も面白い。リアルな歌詞に共感しつつも、「負けずに頑張ろう」と勇気をもらえるような一曲だ。 アップダウンしがちな私たちの日々に寄り添う楽曲たち。こうした毎日を頑張る人々への応援歌は、私たちの日常に彩りを添えてくれるはずだ。
かなざわまゆ