開幕迫る!コンプソンズ最新作『ビッグ虚無』。脚本家・金子鈴幸にインタビュー 「今、誰しもが抱える無力感に向き合いたい」
現代に生きる人々の無力感と、男性が抱く虚しさを見つめて
――新作公演のタイトル『ビッグ虚無』について、コメントで「今の私の気持ちです」と綴っていましたね。その真意について、もう少し詳しく教えてください。 金子 最近、「自分が憧れていたものって、こんなもんなんだ」と思っている自分がいて。例えば、#10で取り上げた性加害事件や、演劇界のハラスメント問題とか……。かつて憧れていた人たちが、そういう酷いことを平気な顔でしているわけです。でも、正義は執行されない。なんてひどい世界なんだ、って。そういう僕の心情と、この言葉はつながっているのかなと思っています。 ――そういった無力感を、今誰しもが抱いているのかもしれませんね。 金子 そうなのかもしれません。また、近年は女性を主人公にした作品を書いてきましたが、今回は「男性」についてもっと踏み込んで考えたいなと思っています。なんというか……男性って本当に、突き詰めていくと虚無だなって思う今日この頃です。 ――(笑)。というと? 金子 最近、「弱者男性論」という言葉をよく耳にしませんか?貧困や障害、恵まれない容姿に悩まされ、女性からも選ばれない男性たちが、社会的に排除されている……という論争です。貧困や孤立の問題にもかかわらず、「隣に女性がいるかいないか」を論点としていること自体がなんだか女性差別的だなと思う一方、なんか共感できる部分もあって。同じ男性として共感できてしまうこと自体が、なんかもう、虚しいなって(笑)。今はそういった題材の映画を観るなどして、「観客にどこまで伝わるか」を模索しています。 ――なるほど……。そのテーマがどういったかたちで脚本に反映されるのか、楽しみです!最後に、読者のみなさんにひとことお願いします。 金子 劇場へ足を運んでくださるみなさんと対決するような気持ちで、『ビッグ虚無』を鋭意制作中です。劇場で、お待ちしております! ――金子さん、ありがとうございました! 取材・文:谷口由佳 <公演情報> コンプソンズ#13『ビッグ虚無』 2024年10月16日(水)~20日(日) 東京・駅前劇場