大統領選圧勝でも消えない「プーチン影武者説」 背後で囁かれる2つの謀略
公の場に姿を現しているにもかかわらず“プーチン死亡説”を喧伝し続ける勢力の意図とは――?[独立労働組合の大会で演説するプーチン大統領=2024年4月4日、モスクワ](ロシア大統領府HPより)
3月のロシア大統領選で5選を決めたウラジーミル・プーチン氏(71)が独裁体制の強固さを印象付ける一方、実は、大統領は昨秋に死去しており、側近陣の企みで大統領の影武者が本物になりすまし国民を欺いている――との前提に立つSNSメディア情報が執拗に流れ続け、主に知識層に困惑を広げている。奇怪なのは、“プーチン死後の世界”を現実として喧伝する発信が政権から弾圧されることもなく行われ、その背後に有力な黒幕の存在がチラつくことだ。帝位継承者などを騙る「僭称者」が頻出した伝統を持つ露社会の歴史トラウマを逆手に取った、反プーチン派の謀略であるとの疑いさえ囁かれる。 “プーチン死後の世界”の到来を喧伝する発信源は、露対外情報庁(SVR)の高官OBが主宰するという触れ込みのSNSメディア「SVR将軍」と、クレムリン内の権力集団の後ろ盾を持つと公言する政治学者ワレリー・ソロヴェイ博士。SVR将軍もソロヴェイ博士も、特に、昨年10月末、プーチン大統領が末期ガンなどの闘病の末に死去した、との情報を発信したため、欧米日を含む世界各国のメディアからの注目度が高まった。 プーチン死亡情報以降も、政権ナンバー2であるニコライ・パトルシェフ安全保障会議書記(72)らプーチン側近の意向により「ベラルーシ出身の大工で海兵隊の軍歴を持つ影武者」が整形手術を受け大統領の代役を演じている、との設定で、“プーチン死後のクレムリンの内情”などに関する発信を日常的に続けている。例えば、3月18日配信の「SVR将軍」は、同月15~17日投票の大統領選で圧勝したのは「プーチンと称される某人物」つまり影武者であり、「偽大統領選の終了は、ロシア権力機構の深刻な危機の始まりに過ぎない」と、“プーチン死後”の真の権力をめぐるクレムリン派閥抗争の激化を予測した。
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古本朗