技術的に不可能と言われた「仮想空間上に宇宙を作る」事業が実現できた理由
「不可能」は技術ではなく想像力の問題
──地球デジタルツインや宇宙デジタルツインの開発には、高い技術力が必要だと思います。 【佐藤】当初、話をしたほとんどの技術者から、「宇宙や地球のデジタルツインは技術的に不可能」と言われました。 ──それなのに、なぜ実現できたのでしょうか? 【佐藤】まったく異なる領域の技術をどのように統合すれば思い描いたことを実現できるのか、その設計図を描けたからだと思います。できないと言われていることの多くは、実は技術的な問題ではなく、人間の想像力の問題なのかもしれません。 地球デジタルツインや宇宙デジタルツインに使う技術は、人工衛星の情報を扱うGIS(地理情報システム)、AI、CGなど、複数の領域にまたがっています。 私は宇宙の専門家ではありませんが、普段から、仕事に関係がなくても、個人的な好奇心で様々な領域の技術をかなり幅広く勉強していて、それぞれの技術の限界点もイメージできています。だから、設計図を描けたのだと思います。 確かに、10数年前に構想した時点では、技術的に難しかった。地球や宇宙をCGで再現するには、莫大なコストがかかりました。 しかしコロナ禍前には、AIやCGの技術が急速に進歩したことによって、複数の領域の技術を横断して組み合わせれば実現は不可能ではなくなっていました。スペースデータでは、人工衛星の写真データなどをもとに、AIを使って、3DCGのデジタルツインを自動生成しています。これによって、コストもかなり下がりました。 ──技術的にできるようになっているのに、なぜ他の企業や研究機関は手をつけないのでしょうか? 【佐藤】経済合理性がないからだと思います。何に使えるかが明確で、儲かる事業でないと、企業は動けません。大学などの研究機関にとっては、論文を書けるかどうかが大事です。 スペースデータの場合は、個人の趣味的なところから始めたので、自分の知的好奇心を制約なく突き詰められます。自己資金なら周りに反対されることもありません。経済合理性に囚われないのが、スペースデータの強みです。 ──必要な各分野の技術者は、どのようにして集めたのですか? 【佐藤】私がアーキテクチャ(全体の構造)を作って、各パーツをそれぞれの領域の技術者にお願いしました。コロナ禍で、世界中で社会活動が停滞していた時期だったので、手が空いている技術者も多く、声をかけたら、副業やフリーランスを含め、各領域のトップ・オブ・トップが集まってくれました。特に、SNSに投稿した動画に反応してくれる人が多かったように思います。 ──2025年には、スペースデータが開発した宇宙ロボットを国際宇宙ステーションに向けて打ち上げる予定だということですが、その目的は? 【佐藤】宇宙空間では強い放射線を浴びます。人間の身体はそれに対応できません。ですから、宇宙開発をスピーディーに進めるためには、地上から操作できるロボットが不可欠です。今回の宇宙ロボット打ち上げは、その技術実証の第一歩となります。