教育機会確保法施行1年 不登校の現場どう変わったか
「不登校を未然防止」という言い方は…、課題を指摘する人も
法律ができ、「不登校は問題行動ではない」という裏づけができた一方、3月末の会議では、こんな意見も聞かれた。 「法律ができたが、現実は周知が行き届いてない。現場の先生や教育委員会があまりご存じなく、そこに課題がある。旧態依然だなと思うこともある」「たとえば、不登校の未然防止という言葉が、いまだに使われている。悪い意味では使っていないと思うが、やっぱり不登校は問題行動なので未然防止ととられる可能性もある。この言葉は検討していただけたらと思う」 不登校の子どもを持つ保護者に取材すると、会議で話題になったように「現場の先生が、法律ができたことを知らない」「そのため、対応が学校ごとに異なったり、人によって違ったりということもある」という意見が複数聞かれた。ある保護者は、「この4月に校長先生が替わったことで、これまでは学校に行かないことを受け入れてくれていたのに、やや難色を示されるようになった」と話す。「先生にとっては、自分たちのやっていることを否定されたように思うのかもしれない。感情論だけではなく組織や仕組みとしての対応が必要ではないか」と打ち明ける。 また、会議ではフリースクールや、家庭で学習している子どもたちへの経済的支援を求める声もあった。文科省の調査によれば、フリースクールの会費(授業料)は、平均して月3万3千円。自宅の近くにあることは少なく、交通費もかかるケースが多い。また、家庭学習も、教材などを自分で購入している場合もある。小中学校は義務教育なので、「不登校の子どもも教育無償化の対象に含めるべきではないか」という意見があるのだ。
こういった現状について、文科省の坪田知広・児童生徒課長に話を聞いた。 Q法律が施行されて1年の受け止めは 現場にとっての不登校の捉え方にかなり変化が見られていると思う。子どもに何か原因があるという考え方よりは、周囲の環境をどう調整していこうかということにシフトしつつある様子が見られる。まだ十分ではない面もあるが、法律ができた意義、できたからこその対応というのが少しずつ出てきた1年だった。学習指導要領には初めて配慮事項が入った。先生は学習指導要領を読み込むので、間違いなく前進していると思う。 Q浸透していないという意見もある。例えば学校や先生ごとに対応が違うといったこともあるようだ 具体的な動きがみられるのはこの(平成)30年度からかもしれない。不登校に限らず、いじめなども組織で対応することが必要だ。校長、教委、教員、スクールカウンセラーなどがタッグを組んで、意識を統一して、対応のまちまちも起こらないようにしないといけない。先生の経験だけではなく、組織で最善の対応をしていく。 不登校といっても要因は様々だ。例えば、いじめや教員の指導などが原因の場合もあれば、集団での生活が苦手というケースもある。これまではその見立てを、先生だけでやっていたが、スクールカウンセラーなどの専門職が入ったことにより、正確に見立てられるようになってきた。今後は少なくとも、教育委員会が学校を束ねている県内、市内といった範囲では、学校・先生ごとに対応が違うという状況をなくしていかないといけない。 Q経済的な支援が必要だという声もある 今は、フリースクールへ通う交通費の一部と、課外実習費の一部などを支援しているが、年収制限があり、それほど活用されていない。フリースクールや家庭での学習に経済的支援をすることは、限られた予算の中、公教育があるのにという形になる。家の近くの学校に、生き生きと通えるのが本当は一番いい。フリースクールは普通は家の近くにないので、通学にも時間がかかり、コストもかかる。家の近くの学校が、行けるような形に変化していくことを応援するほうがよいのではないか。 例えば、一斉に教える授業から、個人のニーズに沿った教え方にというのも、学校がやろうと思えば可能。今の学校をノーストレスで通いやすい形にしたいのは、保護者も私たちも同じだ。最初から、学校はダメと決め付けるのではなく、どういう学校だったら行けるのか、学校と保護者がしっかり話し合って実現していくのが一番理想的だと思う。行けないと思ったらまずは学校に相談してもらいたい。 (取材・文/高山千香)