現代の仲人(11月29日)
かつては、どこにでも1人はいた。おせっかい焼きのご近所さん。子どもの世話からお見合いの相手探しまで、寸暇を惜しんで面倒をみてくれた▼今や仲人さんの役割は組織化されている。未婚化、晩婚化が進む中、県は7年前、伴侶を求める男女を後押しするボランティアグループを誕生させた。現在、96人が「結婚世話やき人」として活動している。自営業者や会社員など職業、立場はさまざま。地域から子どもの姿が消えていく―。当初から携わっている県北地方の60代男性の場合、現状への危機感がきっかけとなった▼会社員時代、職場の若手の縁結びに心を砕いた。退職して近所を見渡すと、独身者が多いのに気づいた。他人の私生活に立ち入れば、うるさがられるだけかも…。ならばと、世話やき人に加わった。相談者の希望や悩みに耳を傾け、「お相手候補」との顔合わせに付き添う。会話の糸口を一緒に探り、デートの行き先を助言する。親身な寄り添いで、40組を成婚に導いた▼献身を支えているのは「誰かの役に立ちたい」という無私の心。一人でも多くの人に「晴れの日」を―。現代のおせっかい焼きさんは、社会の縮みを懸命に食い止めている。<2024・11・29>