AMD、Zen 5世代のRyzen 9000シリーズ発表、さらにAM4用の新CPUも!
2024年6月3日、AMDはCOMPUTEX 2024に連動し基調講演を開催、さまざまな発表を行なった。本稿はコンシューマー向けの製品発表についてまとめたものである。 【もっと写真を見る】
2024年6月3日、AMDはCOMPUTEX 2024に連動し基調講演を開催、さまざまな発表を行なった。本稿はAMDより事前に共有されたブリーフィングや資料の中から、特にコンシューマー向けの製品発表についてまとめたものである。発表段階で情報が変わることも珍しくないので、もしその場合は追記という形で補完する。 Zen 5ベースの「Ryzen 9000シリーズ」は7月に登場予定 今回の目玉は言うまでもなくZen 5アーキテクチャーを採用したSocket AM5向けの新CPU「Ryzen 9000シリーズ」だ。DDR5やPCI Express Gen5といった足回りはそのままに、CPUコア部分(つまりCCDのダイ)を改善した。改善点の詳細は不明だが、分岐予測の精度やレイテンシーの改善、L2L1キャッシュ間の帯域増などが含まれており、Zen 4比でIPCは平均16%の向上を果たしたという。 発売日は“7月”予定と発表されたが、具体的な日時は告知されていない。ローンチ時には16コア32スレッドの「Ryzen 9 9950X」を筆頭に12コア24スレッドの「Ryzen 9 9900X」、8コア16スレッドの「Ryzen 7 9700X」、6コア12スレッドの「Ryzen 5 9600X」となる。 Ryzen 7000シリーズとコア数は据え置きであることから、Zen 5でもCCDあたりの物理コア数は8基が上限であることが推察される。ブーストクロックは据え置きもしくは100MHzの微増にとどまるが、Ryzen 9 9900XとRyzen 7 9700XとRyzen 5 9600Xの3モデルはTDPが前世代より下がっている(170W120W、105W65W)。 前述のIPC平均16%向上というのはRyzen 7 9700Xと7700X比較時のデータ(と資料にある)というのだから、TDPが40W下がっても確実にZen 4より速いことになる。TDPが同じモデルがぜひ見てみたい(おそらくこれが3D V-Cache搭載モデルになるのではと筆者は予想している)。 ライバルであるインテルの第14世代との性能比較も披露された。Core i9-14900K(Intel Default Profile)との比較ではBlenderで56%速く、「Horizon Zero Dawn」では23%高いフレームレートが出せ、大規模言語モデルにおけるトークン処理数においては20%高速であるという。 USB4とPCIe Gen5対応の新チップセットX870EとX870を発表 従来の600シリーズよりも高いメモリークロックをサポート そして今回のRyzen 9000シリーズに合わせ新チップセット「X870E」および「X870」を発表した。新要素としてはUSB4とPCI Express Gen5が全モデルでサポートされる。さらに従来の600シリーズよりも高いメモリークロックをサポート(EXPO利用時)するなどの利点もある。ただ既存の600シリーズマザーでもBIOSのアップデートにより利用できる、というのがAMDの強さだ。 AMDはSocket AM5およびAM4エコシステムのロードマップを刷新した。Socket AM5は当初「2025年以降も使われる」という表現であったが、今回の発表で「2027年以降も使われる」と改められた。さらに、Socket AM4についてはSocket AM4が2025年も使われることを明言した。 Socket AM4に新SKU Socket AM4が延命されるにはそれなりのタマが要る。そこでAMDはSocket AM4向けCPUに新モデル「Ryzen 9 5900XT」と「Ryzen 7 5800XT」を7月より発売する。価格はRyzen 9000シリーズと同様に発表されなかった。 Ryzen 7 5800XTのコア数は8コア16スレッドで5800XTから据え置きだが、Ryzen 9 5900XTは16コア32スレッドとなり5900Xから見るとコア数増になる。 ただ今後さらにコア数を増やした「Ryzen 9 5950XT」はZen 3の構造的にあり得ない(IODからCCDにつながるリンクは2つ、そしてZen 3のCCDは8コアが上限)ので、そこは諦めよう。Ryzen 9 5900XTはCore i7-13700Kに、Ryzen 7 5800XTはCore i5-13600KFにそれぞれ並ぶかより高い性能を発揮できるとしている(ここのインテル製CPUに関してはIntel Baseline Profile相当の設定であるという記述はない)。 NPU性能を50TOPSにまで押し上げる モバイル向け「Ryzen AI 300シリーズ」 またAMDはモバイル向けに「Ryzen AI 300シリーズ」となる「Ryzen AI 9 HX 370」および「Ryzen AI 9 365」の2モデルを発表した。現在のRyzen AI搭載PCはAPU内部に「NPU(Neural Processing Unit)」を搭載しているが、既存のNPU性能は10~16TOPS(Trillion Operation per Second)にとどまる。これをRyzen AI 300シリーズによってこれを50TOPSにまで押し上げる。 10~16TOPS程度の性能では学習モデルも小規模なものに限定され、処理によってはクラウドサービスに任せなければ現実的な性能は出ない。しかし50TOPSまで引き上げることでより多くの処理がローカル環境で、かつ大規模な学習モデルを利用して実行できるようになる。 Ryzen AI 300シリーズのアーキテクチャー面についても発表があった。まずCPUコアはデスクトップ向けRyzen 9000シリーズと同じZen 5、内蔵GPUは現在のRX 7000シリーズを少し改良した「RDNA 3.5」、NPUは「XDNA 2」という構成だ。 肝心のCPU性能に関してはライバルであるインテルの「Core Ultra 9」どころか、アップル「M3」、さらにQualcomm「Snapdragon X Elite」を引き合いに出し、どれが相手でもRyzen AI 9 HX 370が性能で上回ると主張。Arm勢の存在がますます大きくなってくる中、Zen 5ベースのRyzen AI 300シリーズはAIを使わない処理でも高速であるとアピールしている。 ☆☆「COMPUTEX TAIPEI 2024レポート」☆☆ ☆☆特集サイトはこちらから☆☆ 文● 加藤勝明(KTU) 編集●北村/ASCII