台湾情勢が握る世界不況リスク…最先端半導体の覇者は?【経済ニュースの核心】
【経済ニュースの核心】 国際情勢はより混沌としてきた。スロバキアのフィツォ首相は銃撃され重傷を負い、イランのライシ大統領はヘリコプター事故で死亡、国際刑事裁判所(ICC)は、今月20日にイスラエルのネタニヤフ首相らに逮捕状を請求……。台湾も不安定に思える。 TSMC工場進出で半導体バブルに沸く? 注目の熊本県菊陽町から聞こえたタメ息と狂騒 台湾は、一時期、日本の領土だった。日清戦争は、日本の勝利と見なす日清講和条約(下関条約)の調印によって終戦。清国から日本に台湾などが割譲され、1895年5月に日本軍は台湾に上陸。第2次世界大戦の終結で1945年10月に中華民国政府により台湾省が設置されたが、52年のサンフランシスコ平和条約まで日本は正式には台湾に対する権利を放棄しなかった。 この台湾、いまも帰属が不安定に見える。中国は今月24日、台湾の頼清徳新総統が台湾を「戦争の危機」へと向かわせていると警告。中国国防省の呉謙報道官は「台湾省の指導者は、『一つの中国』の原則にあらがう意思を示しており、台湾の同胞たちを戦争という危険な状況に追い込んでいる」との談話を発表した。 米国防総省はオースティン国防長官がシンガポールを訪問し、中国の董軍国防相と会談すると発表した。米中国防相の対面会談は2022年11月以来、約1年半ぶりとなる。米国防総省によると、オースティン氏はシンガポールで31日から6月2日に開催されるアジア安全保障会議に出席する。 さて、ウクライナには世界経済に多少は影響する農業はあっても、半導体産業はない。台湾は違う。世界の最先端半導体の約9割は、電子機器受託製造(EMS)大手のTSMCなど台湾企業が製造しているとみられる。仮に、中国が台湾のEMS工場を稼働停止、あるいは破壊すれば世界の電子機器産業は混乱、世界不況のリスクもある。 また、中国が台湾を省として統治となれば、最先端半導体の製造・流通は中国政府が管理下に置くことになる。それは、米国のもっとも危惧する事態だが、それは習近平国家主席の「サジ加減」にかかっている。年々先鋭化する中国と台湾の対立、台湾は中国の「核心的利益」(どんな代償を払っても守らなければならない決心を示すときに使われる中国の外交用語)である。 米国の世界的な経営コンサルティング会社A.T.カーニーがこのほど発表した24年の海外直接投資信頼度ランキングによると、今後3年間の海外投資先としての中国の魅力度ランキングは23年の7位から3位に上昇した。株価は「景気に先行する」といわれる。中国株の動向に注目したい。 (中西文行/「ロータス投資研究所」代表)