ペニシリン系抗菌薬30年ぶり国産化へ その復活を支える職人技【WBSクロス】
病気の治療や手術に欠かせない抗菌薬の安定確保が急務となっています。現在、抗菌薬の元となる「原薬」の多くを海外からの輸入に頼っていて、その供給が途絶えれば薬が生産できなくなる恐れがあります。原薬の国産化は日本にとって今が最後のチャンスと言われる中、23日、一つの取り組みが動き出しました。 23日、製薬大手「Meiji Seikaファルマ」の岐阜工場で行われた起工式。新たに建設する工場で生産するのは、ペニシリン系の抗菌薬です。 「完成の暁にはわが国のペニシリン原薬のほぼすべてをここで生産をする」(「Meiji Seikaファルマ」小林大吉郎社長) そもそもペニシリン系の抗菌薬とはどんなときに使うものなのでしょうか? 病院で聞きました。 「ペニシリン系抗菌薬は幅広く使われている。中耳炎などから肺炎など重たい病気まで使われている」(「東京医科歯科大学病院」の永田将司薬剤部長) 治療や手術時の感染予防など幅広く使われているペニシリン系抗菌薬。カビ菌が発酵によって作り出した世界で初めての抗生物質です。医療現場で欠かせない薬の一つですが、その原薬は全て輸入に依存しているといいます。 「現状中国で作っているということなので、もし何か起きると基本的に全部使えなくなってしまう」(東京医科歯科大学病院の永田薬剤部長)
中国では巨大な設備で抗菌薬の原薬を大量生産し、世界中に輸出しています。日本の製薬メーカー各社も価格の安さからほぼ100%、中国から輸入した原薬をもとに製造しています。ところが、2019年には中国での工場停止などにより供給がストップ。日本の医療機関でも抗菌薬が不足し、手術が延期されるなどの影響が出ました。
岐阜工場が選ばれた理由
抗菌薬の安定供給が課題となる中、Meiji Seikaファルマは国内で原薬の生産から製薬までを一貫して手がけることを決めたのです。その場として選ばれたのが岐阜工場でした。 「こちらのタンクが165トン槽。ペニシリンはいろいろな栄養源を入れたりする。大きい槽でないと培養が難しい」(「Meiji Seikaファルマ」岐阜工場の宮下隆製造部長) 工場の床下に隠れている部分を含めると全長11メートルという巨大な設備。ペニシリンを作り出す青カビを効率よく培養するためには、発酵槽(大型タンク)が必要だといいます。このタンクが2基稼働すれば、国内需要を賄えます。